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俺はそんな宮本の言葉から逃げるように、今度こそ部屋の中へはいって行った。
そうして、本当に1人きりになると、そっと長い息を吐く。
アイツの顔が、頭から離れない。
アイツが馬鹿だったんだ。殴られて、金をむしり取られて、高校も満足に通えない状態でも、飽きもせずカスの世話なんかするから。
だから、馬鹿を見たんだ。
そう思うのに―――なぜ俺が、罪悪感なんざ感じないといけないんだ。
俺が借金を消せるだけの地位と権力があればよかったのか。金を湯水のように使われても、一家の生活を守るために黙って指をくわえてみていればよかったのか。
そんなわけはないじゃないか。だったら、俺は間違っていないじゃないか。
それでも、アイツに絶望を見せたのは、まさしく俺で。
「………クソが」
それから数日。俺は何とも夢見の悪い日々を過ごした。
何を考えるにも、ガキの顔がちらつく。
我慢ならなくて、その辺のヤツに八つ当たりもした。酒を飲んで、適当な女を抱いて。思いつく限りの遊びをしても、朝比奈のガキは俺の中を占領して行く。
当の本人は、一切家から出てこないくせに。
あれから、朝比奈の家に何度も徴収に行こうとした。活動時間の関係で夕方過ぎにしか行けないが、いつ行っても朝比奈の部屋からは暖かな光が漏れていて、それがまた俺の心にガキを植え付ける。
いつまでそうしているつもりなんだ。オマエは捨てられたんだよ。
ついにそう怒鳴ろうといき込んで行ったとき、ついにガキが部屋から出てきた。
「――――あ、ヤナギさん」
「………っ、チッ」
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