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そして、それと同時に理解してしまった。
あぁ、コイツついに捨てられたんだって。
ついに、なんてあんまりな言い草かもしれない。それでも、俺にはそう表現するしかできなかった。
自分で借りた金も清算できず、さらに借金を重ねて、ギャンブルに溺れる馬鹿な男。その男は家に帰るとガキを殴り、生活費ごと金を奪っていき。
そんなカスみたいな男だったのに、ガキは何も言わず、じっと金を稼いで親の帰りを待っていた。
DNAとか、血のつながりとか。調べないと分からないような目に見えないもので、あんなカスを大事にするのだろうかと内心ずっと馬鹿にしていた。
そうして、最後まで馬鹿だった。
俺はきっと、ガキの方が愛想を尽かす方が先だと思っていたのに。それが予想外で、俺にはガキにかける言葉なんて見つかるはずもなく。
『また来る』とだけ吐き捨てて、結局俺は本来の目的を果たせないまま組に帰ってきていた。
「おかえりなさい、ヤナギさん」
「…………おう」
相当不本意だったが、宮本に出迎えられ、俺は不機嫌を丸出しにしながらそれだけ言うと奥に引っ込もうと思った。
「不機嫌ですね、いつも以上に」
しかし、それを引きとめるように宮本が俺の背中に話しかけてくる。
俺は内心の面倒くささを隠そうともせずに宮本を睨みつけると短く吐き捨てた。
「胸糞わりいもんみたからな」
「惨殺死体を進んで作るあなたにも、気分が悪くなるようなことがあったんですね」
「うるせぇ」
「でも、私が言えたことではありませんが、酷い顔をしていますよ?―――まるで、自分を責めているようだ」
「ちげえよ」
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