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すべての感覚をシャットアウトして、1人の世界に入ると本当にやるせない気持ちになる。

―――俺は、朝比奈側の人間だから。

愛がなんだというのだ。必要であれば遠慮なく利用し、不必要なものは切り捨て。

そうして、自分はここまで来たのだから。

好きなヤツ1人幸せにできず、絶望の中でさまよわせ。

「―――ヤナギさん、こんばんは」

―――それでも、『会いたい』と、自分のエゴを叶えるのだから。

「……ヤナギさん?」

俺は雪をそっと抱きしめた。

俺がいない方が、雪は幸せなのだ。そう分かっていても、手放せない自分がいる。

なんとか傍にいることが出来ないかと、もがいて、あがいて―――結局、雪の親を殺してしまった。

宮本に運転させ、ついた先は雪のアパートの前だった。ちょうど夜勤に出かけようとしていた雪と鉢合わせし、たまらなくなって雪を抱きしめる。

そんな俺に雪は困惑しながらも、拒否はしなかった。それがまた、苦しい。

「―――来い」
「え、ちょっと、ヤナギさんっ。僕これから仕事…」
「知るか。―――テメエの稼ぎちんたら待ってられねえんだよ。しばらく宮本の小間使いやってろ」

雪を腕の中から解放すると、俺は宮本の家に向かって歩き始める。雪が困ったようにしていてもかまわなかった。

「オマエのアパートも仕事先も、全部引き払ってやる。新しい仕事先が決まったら、また迎えに行く」

だから、死ぬまで働け、と言った俺は、どんな顔をしていただろうか。

きっと、誰よりも醜く歪んでいただろう。

それでいい。オマエを、誰も帰ってこないあの部屋に1人でおいておくよりは、ずっといい。

そうして―――オマエはずっと絶望の中にいればいい。

些細な優しさには目もくれるな。偽りの愛情に騙されるな。

利用するだけして、それでも残ったモノを、大事にすればいい。

汚れに汚れて―――それでも愛してくれるものを、信じればいい。

絶望して、そこから真実の愛だけを信じられたなら―――それが、オマエの光になるから。

絶望の闇の中から、這い上がれ。



そうして、俺の想いは終わりを迎えるのだから。





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