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―――そうして次の日。

俺は撮影のアシスタントをした後、急いで朝倉家に向かった。

………はぁ、無事だといいけどな……

仕事をしている間も、データのことが気になって仕方がなかった。

何度も師匠に『ボケっとすんな!』と怒鳴られ、自分の不甲斐なさに打ちのめされてばかりである。

すっかり雨は上がっている状態で見た朝倉家は、ずっと広く見える。

俺はゴクリと息をのむと、恐る恐るインターフォンを鳴らした。

一度目は、反応がない。青年はいないのだろうか、と思いながら、祈るような思いでもう一度インターフォンを押した。

『――――日本語分かんないの?アンタ』

そうして、返ってきたのはそんな辛辣な言葉だった。

朝倉昴だ、と思うとトラウマも相まって身体が固くなるが、固い声音でなんとか用件を口にする。

「…ご迷惑は、百も承知です。昨日そちらにおいてきてしまったカメラに、大事なデータが入っているんです。どうか、カメラだけでも見せてもらえませんか?」
『―――嫌だね』
「え?」

一番聞きたくなかった言葉が耳に響いて、俺はスッと身体が冷えるのを感じた。しかし、朝倉昴はインターフォン越しにさらに続ける。

『大体、話そっちに行ってるはずなんだけど。カメラも弁償するし、そっちの欲しい分だけ金も払うから、今回の取材はなかったことにしてくれ、って』
「それは……っ」
『分かった?俺は来ないでくれっていった。なのにあんたは来た。契約違反はそっちじゃん。話聞きたくもないんだけど』
「でも―――本当に大事なものなんです!」

俺は縋る様な思いで、インターフォンに向かって叫んだ。実際、ちょっと涙が滲んできて、みじめな思いに打ちのめされながら、俺はみっともなく慈悲を請う。

「師匠からお話は本日聞きました!でも、あのデータはとても大事なもので…っ!お願いです、せめて壊れているかどうかだけでも確認させてください!」
『確かにさ、大事なものかもしれないね。だけどさ、それと引き換えに金輪際そっちの会社の取材受けないから、って言ったら、それでも欲しいの?』
「それは―――――っ」

そんなの、俺の一存で決められるわけないじゃないか。

俺のわがままで、会社の仕事を減らすことなんて、できるわけがない。せっかく一度目のチャンスをもらったのに、すでにそれを無駄にしているのだ。俺がなんと言えようか。

でも、俺はまだデータを諦められなかった。

捨てたとか、壊れてたとか、そう言ってくれればいいのに。

まだ一縷の望みはあるんじゃないか―――そんな淡い期待が、俺を突き動かす。





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