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観念したように宗方さんがそういうと、朝倉昴は勝ち誇ったように笑った。

深々と頭を下げる宗方さんにならって俺も頭を下げると、困惑交じりに宗方さんに小声で話しかける。

「もう、今日は帰るんですか?」
「こんな状態で取材が出来るわけがないだろう」

小声で諦めたように言われ、俺は内心ため息をついた。

「じゃ、さっさと出て行ってよ。俺もう少しレッスンしたいから」
「昴!」
「いえ、おっしゃる通りです。お邪魔をして申し訳ございませんでした」

青年がたしなめる声をあげたが、それを宗方さんが制した。そして、俺の背中を押すようにしてそそくさと部屋を出て行く。

「今日は、本当に申し訳ないことをしました」
「いえ、こちらこそ大変な時にお邪魔してしまい申し訳ございません」

心底申し訳なさそうな青年にそれだけ言うと、宗方さんは屋敷を出て行く。

そうして、乗ってきた車に俺を乗せると、『悪かったな』と口を開いた。

「何が、ですか?」
「カメラ、アレ斎藤(さいとう)のお下がりだろ?」

斎藤、というのは俺の師匠である。

窓の外に投げられた大事なカメラを思い出し、深々とため息をついた。

「師匠になんて言ったらいいか……」
「ありのままを言えばいいさ。アイツだって鬼じゃない。オマエに過失はなかったんだから、朝倉に慰謝料請求するくらいの勢いでいればいい」
「………」

大事にしていた師匠のカメラ。

あっけない最後に、俺は涙すらも出てこなかった。

宗方さんが励ましてくれているのも、どこか遠くの言葉のようにすら感じてしまう。

そんな俺の頭を軽く撫でると、宗方さんは『家まで送る』と言って車を走らせ始めた。

それから、どんな会話をしたのかすら覚えていない。

いや、無言だったのかもしれない。きっと生返事しか出来ていなかっただろうけど、宗方さんは俺を家に送って『また頑張ろうな』と励ましてくれた。

「初仕事がアレじゃ、ショックだろうけどな。俺たちは最低もう一回、アイツに詫び入れて取材しに行かなくちゃならない。―――酷だが、次までにはしっかり持ち直してくれよ」
「はい……」





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