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Side ナオ
―――コンサートが始まるまでは、不安で仕方なかった。
それでも、ステージの上に立って、優雅に一礼する昴君を見て、俺は安心する。昴君は最後に会ったときよりもずっと迷いのない顔をしていて、楽しくて仕方がないという顔をしていたから。
生き生きしてるなぁ……
奏でられる音楽の心地よさに身をゆだねながら、俺はそっと目を閉じた。
毎日のようにあの家で聞いていた音楽。だけど、力強くて暖かい。
昴君の魅力がたっぷり詰まった一音一音がすごく心地よくて、俺は何度もこみあげる涙を我慢した。
だけど、コンサートが終わって。
スタンディングオベーションで割れんばかりの拍手に包まれた昴君を見て、俺はついに泣いてしまった。
―――痛いくらい伝わったよ、君の気持ち。
俺は、君を理解できないかもしれない。ともに歩んでいくことが、君を傷つけることになるかもしれない。
―――それでも、未熟な俺を、昴君は望んでくれるのか。
ステージの上と、観客席。
高さがなければほんの数メートルの距離で、俺たちはお互いの心に触れた。涙が溢れて来て、滲む視界で昴君も泣いているのを見て、胸が締め付けられるようだった。
「……はやく、会いたい」
俺はそうつぶやくと、一目散にステージ裏へ向かった。
配達してもらった大きな花束をフロントで受け取り、昴君のもとへ急ぐ。
「―――ナオ」
そうして、コンサートを終えたばかりの昴君を訪問すれば、昴君は俺を見て腕を広げてくれた。
「昴君…っ!」
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