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俺はその言葉に目を丸くした。それと同時に浮かんだのは、困惑だ。

「……俺で、いいんですか?」
「いいも何も、『昴の傍にいて下さる』んでしょう?」
「あ――――」

俺たちの会話は筒抜けらしい。思わず顔に熱が集まるが、それを見て慧さんは小さく笑った。

「恥ずかしがることでもないでしょうに」
「いや、必死だったもので、くさいことを言ってしまって…」
「でも、本音だったんでしょう?」
「―――はい」

俺は頷くと、慧さんが満足そうに微笑んだ。

「俺、まだ未熟者ですが、よろしくお願いします」
「ありがとうございます。おかげで、あなたの師匠さんからは怒られてしまいましたよ。『アイツをからかうな』とね」
「はは……」

それで師匠は不機嫌だったのだろうか、と俺は苦笑した。

確かに、師匠から見ただけでは、弟子の1人立ちを邪魔された揚句仕事の時間を削ってまで昴君のお守りをさせられ、やっと帰って来たと思ったら取材の依頼だ。

思わず慧さんに文句の一つでも言いたくなってしまったのかもしれない。

「師匠には、俺からきちんと説明しておきます。…あの、最後に一ついいですか?」

俺は慧さんにぺこりと頭を下げると、慧さんをうかがうように見上げた。

これだけは、どうしても聞いておかないといけない。そんな俺の様子に不思議そうにしながらも、慧さんは『何でもどうぞ』と言ってくれた。

それに甘えて、俺はずっと疑問に思っていたことを伝える。

「―――コンサートって、スーツじゃないといけないって本当ですか?」



Side 昴


―――帰ってきた慧の様子をうかがえば、随分奇妙な顔をしていた。

「……楽しそうだな、慧」
「ふふっ、久々につぼに来ましたね」

お腹を抱えながらリビングに入ってきたかと思うと、堂々とそんなことを言ってのける。

最近ナオにあえていない俺からしたら嫉妬モノだが、少しでもナオの様子を聞きたい欲望が勝って、グッと我慢してから『どうしたんだよ』と聞いた。

「真面目な顔をして、どんなことを聞かれるのかと思ったら『コンサートはスーツじゃないといけないんですか?』だよ?ちょっと抜けてるよね、彼」
「………アイツは…」





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