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昴君の一番の理解者は、昴君自身。

自分でもわからない気持ちって、実は心の奥底とか、無意識のうちにあると思う。

だけど、それが溢れてくるのは、まぎれもなく自分の内側からで。

自分の中にあるものなのだから、いつかきっと気づけるはず。

「俺は、昴君の中にある純粋な、綺麗な部分に惹かれるんだ。ピアノを通して伝わってくる、優しい感覚に」

昴君は、もう分かっている。

両親がどうしてあんな言葉を言ったのか。

慧さんが、どうして何も言わないのか。

『昴君を心配してくれている人がいるんだよ』って、両親は言いたかった。

『どんな選択をしても態度は変わらないんだ』って、慧さんは言いたかった。

そう分かっているから、無意識に自分の選択を『わからない』という。

自分の選択は、家族の思いを無下にしてしまうのではないか、そんな不安から、『頑張ってもいいのか』って悩むのだ。

純粋な優しさの溢れた、深い愛情。

だからこんなにも、心地がいい。

「……どんな選択をしても、俺は昴君の味方だよ。もし、昴君が許してくれるなら、これからもずっと、昴君の傍にいたい」
「ナオ…………」
「だから、怖がらないで。答えを、次のコンサートで教えて」

昴君は、俺の手をそっと握った。まるで二人で昴君の心に触れているようだ、と感じていると、昴君の目から一筋、涙が溢れた。

「……あ、チクショ…っ」
「昴君……」
「見んなよ、恥ずかしいだろっ」

昴君は慌てたように目をおさえると、ごしごしと擦って涙をなかったことにしてしまう。

そうして、少しかすれた声で『わかった』と頷いた。

「……約束だよ?」
「あぁ」
「…じゃあ、次に会うときはコンサートだね」
「約束だ」

昴君はそういうと、俺に顔を近づけてきた。突然のことに、俺は目を丸くする。

「ちょ、なんで顔近付けてくるの?」
「―――約束の後は、誓いの証だろ?」

そう言って意地悪に笑うと、昴君は俺をがっちり抱きしめて逃げられないようにしてしまう。

「もう、やっぱり昴君は昴君か」
「当たり前だ」

観念したように呟くと、すぐに昴君の吐息を感じて唇が重なる。

誓いのキスは、昴君の気持ちをそのままぶつけてくるようで、それでもとても優しくて。

俺の中に一滴の雫を落として、さざ波とともに静かに染みわたっていった。

―――昴君の一番の理解者は昴君。

だけど、少しでもその気持ちを共有できたらな、って俺の心が叫んでる。

昴君の純粋さに触れるたび、惹かれて行く自分がいて、どれだけ傷ついても、愛しく思えてきてしまうのだ。

素直じゃなくてもいい、意地悪でもいい。


―――だから、その純粋な心を、俺にも守らせてください。





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