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「じゃ、片づけは俺がしとくからね」
「当たり前だ」
食事を終えて、片づけを申し出ると当然だと言わんばかりに昴君はふんぞり返っている。
ぐいぐいこちらに食器を押してくるのでそれを受け取ると、俺は食器を洗いにキッチンに向かった。
「……あれ?まだいたんだ?」
「いちゃ悪いか。ここは俺の家だ」
「そうだけどさー……」
キッチンから戻ってきても、昴君はリビングのソファーでくつろいでいた。
思わず失礼なことを口走ってしまうものの、昴君は相変わらずの調子である。
普段なら迷わず自分の部屋に戻ってしまってピアノのレッスンをしているのに、今日は本当に珍しい。
「…慧さんに何か言われたの?」
「言われてねえよ。俺がどこで何をしようが勝手じゃねえか」
「うん…それじゃ、俺客間にいるね」
「なんでだよ」
「なんでって……」
普段は時間さえあればピアノを弾いている昴君だ。
今日は弾かずにおとなしくしているということは、相当疲れがたまっているということだと思う。
週末の休息くらいゆっくり取って欲しいし、俺が居ても落ち着かないと思ったからそういったのに、昴君は急に不機嫌になってしまった。
「今日は疲れてるんでしょ?俺邪魔しないようにしとくから、ゆっくりくつろぎなよ」
「そうじゃねえよ」
「そうなの?でも、お風呂いれてこなきゃいけないから―――」
「――――ナオ!」
いきなりのことに、俺は目を丸くした。
昴君はそういったかと思うと、いきなり俺のところに来て腕を掴んだのだ。
突然のことに思わず自分の腕を見ても、そこは昴君の腕とつながっていて。
昴君の腕をたどりながら上を見ると、昴君も目を丸くしていた。自分でも思わず、という感じだったのかもしれない。
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