歩み寄る夜
Side ナオ
―――ふっと目が覚めたとき、自分がどこにいるのか分からなかった。
外はすっかり暗くなっていて、もう夜だということが分かる。そうして、覚醒していくにつれて状況が理解できてきた。
―――俺、昴君の家で寝ちゃったんだ……
最近フルネームで呼び捨てをやめ、心の中でそう彼を呼ぶようになったのだが、それは置いておいて。
変な姿勢で寝ていたせいで、身体が痛い。
それでも、身体にかけられた毛布に、俺は目を丸くした。
「…昴君が、かけてくれたのかな……」
驚くと同時に、少し心が温かくなる。
自惚れと言われようが、彼の方からこちらに行動を起こしてくれたのは嬉しかった。
どこの部屋から持ってきた毛布かわからないので毛布を抱えてリビングに行くと、昴君は夕飯を食べていた。
俺が用意していなかったから、自分で作ったのかもしれない。
申し訳なくなりながらおずおずと部屋に入ると、昴君の方から声をかけてきた。
「―――起きたのか」
「え、あ、ハイ」
「あっそ。泊ってってもいいから、大人しくしといてよね」
そっけなく言うと、昴君は食事を再開してしまう。
「あのっ、毛布ありがとうっ」
俺は昴君の前に行くと、そう言って笑いかけた。
「はっ、馬鹿面してんじゃねえよブス」
しかし、昴君は鼻で笑うとそう暴言を吐いてきた。しかしこれも慣れてきたもので特に堪えたりはしない。
暴言に慣れてくる、というのも微妙な心境ではあるが、とりあえず今日は宿泊の許可ももらえたし、一歩前進しできたような気がする。
ほくほくとした気持ちで笑っていると、昴君が『見てんじゃねえよ』と言ってきた。これはただの照れ隠しだと分かっているので『スイマセン』とだけ返しておく。
「―――夕飯レンジの中」
「はーい」
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