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「何でも命令聞くんだろ?―――自分で犯されるために、脱げ」
朝倉昴は、それ以上は何も言わない。俺の反応を見極めるつもりなんだろう。
きっと、彼は『出来ない』を待っている。それが分かっているから、俺はその言葉を封印した。
そのかわり、視線を外すことなく、大人しくシャツのボタンに手をかける。
ボタンをことさらゆっくり、見せつけるようにはずしてやる。自分がこんなに挑発的な行動を取るなんて夢にも思わなかった。
でも、俺にもささやかなプライドがあって。
プロを目指すものの、譲れない感情。言ってしまえば、ピアニストの彼も、カメラマンの俺も、広い意味では『アーティスト』で。
芸術家として、否定されたくない場所だった。同業者には特にそうだ。
「全部な、下もだ」
「―――あなたは脱がないんですか?俺のストリップ見てても楽しくないでしょう?」
「オマエこそ、俺のストリップみて何が楽しいんだよ。変態」
「そっくりそのままあなたに返しますよ、その言葉」
そんな言葉の応酬を繰り返しているうちに、俺はついに全裸になってしまった。
明かりの下、何も隠すものがなくなった状態で、やはり羞恥心がこみあげてくる。
思わず横を向いて身体を隠そうとしたが、足の間に朝倉昴が入ってきて隠す場所も逃げ場所も奪ってしまう。
「―――どうせ、何も考えられなくなるんだ。大人しく感じてろよ」
「っ、ぁ」
朝倉昴は意地悪く笑いながら、俺の身体に指を這わせる。ひんやりとした指に触れられ、俺は小さく震えた。
わき腹をなぞられ、何もない胸に触られる。引っかくようにして乳首を弄られると、嫌でも身体が熱くなるのを感じた。
どんどん朝倉昴の手の冷たさが強調されていく。それほど自分の体が温かくなっているのだと知って、俺はなすすべもなく身悶えた。
「あぁ…っ」
ついに下肢にも手を伸ばされ、ダイレクトな刺激につい声が漏れてしまう。
俺はそれを隠すように、自分の指を噛んだ。手で押さえていてもくぐもった声が漏れてしまうので苦肉の策である。
「噛むな、手を離せ」
すぐに、朝倉昴の命令が入る。だけど、俺は小さく首を振った。
犯されて声を出すなんて、なんて言われるかわからない。きっと馬鹿にしたように『インランだ』と罵られてしまうのだろう。
そんな展開が予測できているから、俺は後ろに指をさしいれられてもずっと指を噛んだままだった。
身体の奥に異物感を感じ、中心もすっかり萎えてしまっていたが、今度は泣きごとを呟いてしまいそうだったので指を離すことができない。
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