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朝倉昴はそういうと、俺に馬乗りになり顔を近づけてきた。それが意図する行為は一つだけだが、俺はあえて目を閉じたりはしなかった。

唇が、そのまま重なる。

触れるだけの口づけを繰り返しながら、お互いに目を閉じたりはしなかった。

ただお互いの出方をうかがうように睨みあっているだけである。

「………っ、ん」

そんな無言の攻防を繰り返していると、舌がさし込まれてきて俺はちいさく身震いする。それを逃げている、と思ったのだろう。

朝倉昴は逃がさない、とでもいうように俺をギュッと抱きしめてきた。言葉で言うには甘く聞こえるかもしれないが、純粋に拘束である。

まるで、俺に現実をしらしめるかのようにきつく力を入れられ、俺は苦しさから逃れるように口を開いて酸素を求めた。

「…素直にそうしてればいいんだ」

朝倉昴は唇をくっつけたままそういうと、あいた口の奥深くまで舌を差し込んできた。俺はされるがままになるのが癪で、そのまま舌を絡め返した。

それは予想外の反応だったのだろう。朝倉昴は一瞬動きを止めたが、すぐにまた行為を再開する。

ひとしきり唇を重ね、唾液を交換した事で俺たちの口の周りはベタベタだった。唇もジンジンしているから、きっと真っ赤になっているのだろう。

俺はごしごしと唇をぬぐうと、馬乗りになっている朝倉昴をみた。

先ほどほどの強い怒りは見えなかったが、無表情は逆に何を考えているかわからない。
多分、相手もきっと同じだ。

俺の考えが分からなくて、きっと様子をうかがっている。

野良猫のように警戒心をむき出しにしながら、俺を試している。俺がどれだけ本気か、どれだけ朝倉昴に真剣に向き合っているか。

「―――脱げよ、自分で」

先に動いたのは、朝倉昴の方だった。

朝倉昴は俺の上着をつまんで見せながら、もう一度言葉を重ねた。





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