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掃除自体は、苦になる方ではない。目に見えて綺麗になっていくのは清々しいし、達成感を感じられるから。
しかし、本当に一階はほとんど使われていないらしい。服が散らばっているとか、そういう汚れではなく、純粋にホコリがたまっているだけの状態の部屋がほとんどで、家具もあまりないことから掃除自体は本当に簡単だった。
埃を掃いて捨てると、雑巾で拭き取る。換気のために窓を少し開けているだけでずっと清潔感が出てきた気がする。
そんなこんなで、一階の掃除はつつがなく終わった。
夜になったので窓を閉めて回っていると、トントンと階段を下りてくる足音がした。
朝倉昴だ、と内心ドキリとしながらも、挨拶のためにパタパタとリビングに戻る。
「こんにちはっ」
「………」
朝倉昴は、俺が挨拶をするとじとっと睨みつけてきた。
嫌われてるなぁ、と内心へこみながらも深々と頭を下げる。
「今回は我儘を聞いてくださりありがとうございました。約束通り何でもしますので、よろしくお願いします」
「―――――はっ、ウソツキ」
朝倉昴は、俺の言葉を聞くと鼻であざけるように笑った。そうして、リビングにあるソファーに座ると、俺を睨みつけるようにして見上げてくる。
「それ、本心じゃないんでしょ?年下にいいように使われるなんて我慢ならなくて、内心『なんでこんなことをしなきゃならないんだ』って思ってるんでしょ?」
「そんなことはありません!」
「言い切るなよ気持ち悪いな。―――分かってんでしょ?俺がデータ返す気がないのなんて」
「―――――っ!」
朝倉昴の言葉に、俺は目の前が真っ赤になるのを感じた。それにかまわず、朝倉昴はどんどん続ける。
「そんなことしたって、修理がうまくいくなんて限らないじゃないか。とりあえずヒマつぶしに年下のご機嫌とっとけって上司に言われた?パイプがあった方が次のアポ取りやすいもんね」
「―――いい加減にしてください!」
俺は朝倉昴の言葉をさえぎるように叫んだ。これ以上の暴言は―――プロを目指す俺への侮辱だ。
「俺を舐めないでください!最初からあなたがカメラを返す気がないのなんてわかってますよ!―――それでも、大事にすることの何がいけないんですか!無理だってわかってたら、頑張ったらいけないんですか!?」
「―――――」
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