奴隷生活開始です




その次の日。俺は仕事を終えるとそのまま自分の足で朝倉昴の家に向かっていた。

『お待ちしていましたよ。すぐに開けますね』

インターフォンを鳴らせば、朝倉昴の声ではなく取材をしたときにいた青年の声で応対される。

俺は促されるままに中に入ると、リビングのような部屋で彼と向き合っていた。

「こんにちは。今日はよくいらしてくださいました。昴が我儘を言ってしまい申し訳ありません」
「いいえっ。カメラもデータも大事なものですから、こちらの我儘を聞いていただいて感謝しているくらいです」

いきなり青年に深々と頭を下げられ、俺はあたふたしながらもそう答える。

青年は頭をあげると、『本当に申し訳ないです』ともう一度つけたしてから、小さくほほ笑んだ。

「自己紹介が遅れました。俺は朝倉慧(あさくらけい)と言います」
「え……まさか」
「はい、うちの愚弟がご迷惑をおかけしております」

青年、慧さんは朝倉昴の兄にあたるらしい。雰囲気は慧さんの方が落ち着きがあって、朝倉昴の方が華やかな感じだ。

言われてみれば顔立ちは似ているかもしれないが、物腰から全然違うのですぐには気付かなかった俺は、素直に驚いてしまう。

「お兄さんだったんですね…慧さん、とお呼びしてもいいですか?」
「はい。名字では昴とかぶってしまいますからね。お好きによんでください」
「ありがとうございます。あの、慧さん。俺は弟さんの雑用をするように言われたのですが、彼はいないのですか?」

俺は首をかしげながらあたりを見回した。

自分の奴隷だ、という位だから、何か無茶な命令をされるのではないかと思っていたが、肝心の朝倉昴はどこにもいない。

これでは奴隷どころか、何をしていいのかすらわからないので木偶の坊もいいところだ。

相手の出方が分からないのが逆に不安で、慧さんに思わずそう問いかけてしまう。

慧さんは俺の方を見ると、困ったように苦笑した。

「昴はまたレッスン室に籠ってますよ。今までもめったにあの部屋から出てくることはなかったんです」
「では…俺は何をしたらいいんでしょうか?」
「そうですねぇ…」

慧さんは考えるように顎に手を当てると、しばらく黙りこんでしまった。そうして、すぐに俺に向かって口を開く。





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