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二人を心配させないようにと、俺はことさら明るくほほ笑む。

師匠に事情を相談したところ『…まぁ、坊ちゃんのわがままに付き合ってやれ』と言われて背中を押されてしまった。データを諦めろ、と言わなかったのは、師匠がカメラマンだからかもしれない。

写真は、瞬間が命である。

もう一度同じ場所で、同じように撮影したとしても、同じ写真が二枚撮れることはない。

画家が完璧な模写をすることができないように、写真もそれほど緻密なアートなのだと俺は思う。

だから、セリさんがモデルをやめる最後の瞬間、そんな貴重なデータを諦めることは出来なかった。そして師匠も、そんな俺の気持ちを分かってくれたのだろう。

「俺の雑用を減らしてくださって、仕事を早く終わらせてくれるらしいので、目一杯頑張ってみようと思います」
「ナオ……」
「―――辛かったら、迷わず言ってね?いくらでも味方になるから」

未だに納得がいっていない表情の慶太と、心配そうに俺を見ながらも理解を示してくれるセリさん。

―――友人二人に心配してもらえて、俺は幸せ者だな。

二人を眺めながら、しみじみそう感じる。この世界に入ってこなければ出会うこともなかった友人二人は優しく、そして俺に勇気をくれる。

明日からのことは、分からない。正直言って、強がっていても不安の方が大きい。

それでも、頑張りたいと思った。

俺のことを気にかけてくれている人がいる、その事実だけで十分だ。

そんな人たちに見合う人間になれるように、俺は頑張るだけである。

大丈夫、の意味を込めてもう一度微笑むと『仕方ないなぁ』とセリさんが笑った。

「応援するよ、ナオ君。だから今日は、たくさんご飯食べて体力つけてね」
「はいっ」
「何かされたら絶対言えよ。裏から手をまわしてやるから」
「それじゃ言えないだろー」
「もう、慶太ってば」

慶太の言葉に二人で呆れたように言うと、慶太はバツが悪そうに顔をそむける。

そんな様子を見て、俺たちは思わず笑ってしまった。とたんに、暖かな空気があたりを支配する。

そんな風にして、三人で仲良く夕飯を囲み、ほのぼのとした団欒を過ごしたのだった……







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