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―――あ、と思った。

冬慈さんの声が、どこからかする。…どこから?

声に惹かれるままに、僕は大通りに歩いて出た。

そこにあったのは駅前の大きな電光パネルで、テレビを中継しているのか、そこには見覚えのあるニュースキャスターの隣に座る冬慈さんの姿が見えた。

「―――冬慈さん…っ」

冬慈さんが、笑ってくれている。

僕が願えば、会いに来てくれるのだ。画面越しでも、声を届けてくれるのだ。

さっきとは違う、涙が溢れた。

体中に、愛しさが駆け巡る。

さっきまで空っぽだった僕に、いろんな力が満ちてくる。

冬慈さんの姿を目に焼きつけたくて、僕は涙をぬぐってパネルが良く見える近くのベンチに座る。

「――あのひと、最近毎日テレビに出てるよね」
「前から人気はあったみたいだけど、テレビ断ってたので有名だったのに」
「ねぇ、今日も言うかな?」
「いうんじゃない?」

通り抜ける通行人の声が聞こえてくる。

僕はと言えば、冬慈さんの一挙一動を逃さないように、じっと食い入るように画面を見ていた。

―――あ、ネクタイピン…

画面でぼやけてほとんど見えないけど、一瞬アップで映った時に見えたピンクゴールドのあれは、僕があげたものだ。

大事に、してくれているんだ…

『さて、今日はここまでです。辰巳さん、ありがとうございました!』
「ありがとうございました」
『さて、今日も恒例のアレ、出ますか?』
「はい」

さっきの通行人が言っていたヤツのことだろうか。

最近テレビさえまともに見ていない僕は、訳が分からなくて首をかしげる。

すると、冬慈さんは画面に向かって、微笑みながらこう言ったのだ。



「……いつまでだって、待ってるよ」




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