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その一言に、僕は目を丸くした。
今日は、ヤナギさんがいない日だ。
近くの組との抗争があるようで、3日は帰ってこないらしい。
「若頭がいるときは頑として頷かなかったからな…いないときに、こっそりだ。オマエも黙ってろよ」
――それを、僕に言うのか。
今から犯そうとしている相手に、そんなことをいうのか。
あまりに理不尽な仕打ちに、僕は全身で嫌悪感をあらわにした。
じたばたともがき始めた僕に、先輩たちは面倒臭そうに舌打ちする。
「テメー大人しくしてろっ!」
バキッ、と嫌な音がして、先輩たちの拳が身体に沈む。
思わず防御に出した腕は、折れてしまったかもしれない。
あまりの激痛に顔をしかめる暇もなく、拳の雨が降ってくる。
―――そうして冷たさで気がついたときには、知らない部屋に連れ込まれていた。
「―――よぉ、お目覚めか?」
そういった先輩の手にはバケツがあって、意識を失っていた間に部屋に連れ込まれ、先ほど冷たいと感じたのは水を浴びせられたからだということを知った。
「腕いかれちまってるが、ヤる分には問題ないよな」
そう言って、先輩は僕を蹴飛ばし、部屋の真ん中に放置する。
部屋に新しく人が来たことを知らせる扉の音に、僕は目を閉じた―――
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