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「―――残念だったな、あと半分ってとこだったのに」
「それは関係ありません」
―――1カ月して、僕はヤナギさんとともに彼の組へ向かっていた。
「…これから、借金が消えるまでよろしくお願いします」
一応お世話になるわけだし、形だけでも頭を下げると、『心がこもってねぇ』と一蹴された。
「…言っておくが、うちの組は上下関係厳しいぞ。オマエは下の下。上の命令は絶対だからな」
「はい」
お世話になる組は想像以上に大きくて、僕はとんでもない所に来てしまった気がする。
それでも、これは最後の試練だ―――
「じゃ、まず庭の掃除な。終わったら適当に声掛けろ」
そういうと、荷物を置く暇もなく箒を渡され、冬の庭に1人下ろされる。
そこは僕たちの想像していた一般的な家庭の何倍も広さがあり、庭木もかなりの量植えられていて、僕は思わず怖じ気づきそうになった。
でも、それがヤナギさんの狙いなんだと思うと、自然と箒をもつ手にも力が入り、寒さも我慢できてくるから不思議である。
「…やります」
「へーへー」
ヤナギさんはそういうと、興味を失くしたかのように奥に向かってしまう。
僕は最近ホテルの仕事で身に付けた掃除スキルを最大限に利用して掃除に勤しんだ。
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