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ヤナギさんのいう意味がわからなくて、僕はただヤナギさんを見上げた。
「誰に股開いて、誰に貢がせた金かって聞いてるんだよ」
「そんなこと、僕はしてませんっ」
「じゃあ、借金返す予定のとこから引っこ抜いてきたのか。…調子のってんじゃねえぞっ!」
ほとんど恫喝に近い調子で迫られ、僕は思わず縮こまる。
それでも、タツミさんへの贈り物を返してほしくて、震える体で口を開いた。
「…借金を返す分は、用意しています。僕の食費から抜いた、僕のお金です。あなたに文句を言われる筋合いはないです」
「―――オマエ、本当に分かってないのな」
ヤナギさんは全身で憐れみを表現しながら、僕の前にしゃがみこむ。そのまま髪の毛を掴まれ、なすすべもなく至近距離で睨まれた。
「オマエ、あんなに信用するなっていったの、覚えてないのか?第一、客に貢ぐなんて聞いたことがねえよ。オマエがすべきは、貢がれるだけ貢がれて、質屋にそれをいれて俺らに金返すことじゃねえの?」
「………」
「それをちょっといい顔されたらあっさり騙されやがって―――オマエみたいな薄汚いやつ、誰も相手にするわけないだろうがよっ!」
「うっ」
掴まれていた髪の毛を離され、そのまま足で蹴飛ばされる。受け身も十分に取れず、鼻血が流れていく感触がした。
「オマエが傷つく前に―――なかったことにしてやるよ」
「っ!止めてくださいっ!!」
ヤナギさんが何をしようとしているのか分かって、僕は慌てて制止の声をあげる。
しかし、ヤナギさんはプレゼントの箱をぐしゃりと握りしめると、公園にあった噴水に投げ入れた。
「止めてください―――っ!」
僕の制止もむなしく、箱はみじめな形になって噴水の中に消える。
僕はそれを見ると、そのまま噴水に向かっていった。
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