6
デパートを出てみればすでにあたりはうす暗くなっていて、僕は急いでバーに戻ることにした。
最近は日の沈みが早く、日が沈んでしまえば外は寒い。だんだんと冬の様相を示してきた世界を、僕は走って家に向かった。
―――はやく、はやくっ。
土曜日が待ち遠しくなる。
タツミさんは喜んでくれるだろうか。
笑って、くれるだろうか――――
「あっ!」
―――その時、横から伸びて来た手に、僕は羽交い絞めにされる。
そのまま近くの公園に連れていかれ、訳が分からないまま投げ飛ばされた。
「……っ!ヤナギさん……っ」
「よぉ、楽しそうだな?」
見上げればヤナギさんが僕を見降ろしていて、口元は笑っているのに怒りをたたえた目で睨まれた。
そのまま腹を思いっきり蹴られ、僕はなすすべもなく地面にはいつくばる。
「みじめにそうしてればよかったのに…ちょっと好きにさせたらこれだもんな。オマエ、自分の立場しっかりわかってんの?」
「あっ」
そのままタツミさんへのプレゼントを奪われ、僕は縋るようにヤナギさんの手を掴む。
それを容赦なく振り払われ、さらに拳で肩を殴られた。
「ぐっ」
「顔は勘弁しといてやるよ。バーに出られなくても困るだろ?」
「返して、ください…っ」
「なぁ、これは誰の金で買った?」
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