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家に帰ると給料袋を開けて、早速中身を確認してみる。
ユウイチさんの言うとおり、そこには想像以上の金額が入っていた。
あまりの多さに思わず給与明細を確認してしまったほどだが、どうやら間違いではないらしい。
そこから、これから引かれるであろう値段を考えた。
「…これが家賃分で店長に渡す分。あと、電気ガス水道…それと、食費。あと、生活消耗品にこれくらい。―――あとは、借金の返済に…」
今まで通り分別をすると、思った以上に借金の返済に充てることができていた。今まで食費は一日一食で計算していたのに、今回は一日三食で計算しているにも関わらずだ。
僕はユウイチさんの言葉を考えて、食費から少しだけお金を抜き取った。
「……一日一食にすれば、今までどおりだし、大丈夫。食費から抜いたんだから、ヤナギさんも怒らないよね」
ヤナギさんは僕のお金をむしり取れるだけむしり取ってしまうが、食費から抜いているので借金の返済に充てる分は減っていない。
僕は一つ頷くと、そのお金を持って外へ出た。
タツミさんは本当に雲の上の人だから、生半可なものはみんな持っているだろうし、安物をあげるなんてとんでもない。
安くてたくさん、ではなく、シンプルに一つだけ贈ることはずっと決めていた。
ホテルのある駅前通りに向かい、そのままデパートに入っていく。
デパートなど一生で一度も来たことがなかったが、僕が想像していたものよりも桁が一つ分高くて、僕はすでに尻込みしそうだった。
「タツミさん料理するし、キッチン用品かな。…でも、それだと味気ないよね」
最初は一階のキッチン用品を見ていたが、どれもいまいちピンとこないか、すでにタツミさんが持っているものばかりで、結局断念することにした。
次に行ったのはタツミさんの好きなワインが置いてある店だが、僕にはワインの良し悪しは分からなくて、あえなく断念。
―――それでも、わくわくする。
初めてなのだ、誰かに贈り物をするなんて。
どんなものが喜んでもらえるだろう。どんなものなら似合うだろう。
そうやって考えていると、タツミさんはいないのに、タツミさんの傍にいるような気がした。
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