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「―――はい、ヒナ。お疲れ様。今月の分ね」
「ありがとうございます」

―――数日後。ホテルでの仕事が終わった後ユウイチさんに呼び出され、一か月分の給料をいただいた。

僕名義の口座を開設していないため、手取りで受け取ることになったのだが、ユウイチさんはまるで自分のことのように喜んでくれている。

「頑張っていたからね。きっと思っているよりずっと多いと思うよ」
「ありがとうございます。今月も頑張りますね」
「そうしてほしいな」

冗談交じりに言われ、僕は頭を撫でられる感覚に目を細めた。

「ヒナに報告したいんだけどさ、俺も今月の給料で家族を食事に誘ってみたんだ。あれから全然そういう家族らしいことしていなかったからね」
「本当ですか!すごくいいですね」
「今日予約してきたんだ。辰巳さんのおすすめでね、みんな喜んでくれると嬉しいんだけど」

どうやら着実に心の距離を取り戻しつつあるらしいユウイチさんたち家族に、僕も嬉しくなってくる。

「ヒナは?何か使う予定はある?」
「え……?」
「え、じゃないだろう。初任給なんだから、ちょっとくらいハメ外しても誰も怒らないさ」

呆れたように笑われ、僕は言葉に詰まる。

僕は当然のごとく借金に消えると思っていたし、そのことに何も異存はなかったのだから。

「普段お世話になっている人や気になる人を食事に誘ってもいいし、自分のために服を買ったりするのも楽しいと思う。…ま、これは俺の意見だけどな」

ユウイチさんのその言葉を聞いて、僕は言葉に詰まった。

頭の中には、タツミさんの顔が浮かんでいて。

彼に、何か出来ることはないか、と考えていたのはつい最近だ。普段良くしてくれていることへの感謝の気持ちに、何かささやかでも贈れたら―――

「…はい、考えてみます」

ユウイチさんの助言に頭を下げると、僕はそのまま家路についた。





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