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それから程なくして、タツミさんが面接室に現れて、僕の緊張はマックスになった。

ビジネス風のタツミさんは普段のやわらかい雰囲気とは異なり、どこか相手の気を引き締めさせるような効果があるのかもしれない。

すっかりカチコチになってしまった僕に、タツミさんは優しく笑ってくれた。

「そんなに固くなるな。すぐに終わるから……今から面接を始めます。よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」

それから面接が始まって、僕は質問に答えるたびだんだんと落ち着いていくのを感じた。

高級感溢れるビジネスホテル、といっても質問内容は他の職種と大差ないようだ。

ただ、清掃がメインだということで、『家で何回掃除をするか』や『ベッドメイキングについて』などを中心に聞かれるだけで、後は特に困る様な質問はなかった。

「さて…質問は以上です。お疲れさまでした」
「ありがとうございました」

そういう流れでつつがなく終わった面接に、僕は安堵の息をこっそりはいた。

タツミさんは僕の履歴書に目を通した後、何かの書類にサインをしている。仕事をしている横顔も素敵で、普段とは違う一面に僕はドキドキしっぱなしだ。

タツミさんは書類から顔をあげると、そのまま僕に笑いかける。

「さて……仕事は終わりだ。雪」

タツミさんはそういったかと思うと、僕に向かって腕を広げた。それが意味することが分かり、僕は泣きそうになりながらその胸に飛び込む。

「冬慈さん……っ」
「よしよし」

―――今度は迷わず飛び込めた。

その事実が嬉しくて、冬慈さんの背中に腕を回し、縋るようにその胸にすり寄る。

そんな僕を、優しく抱きとめてくれた冬慈さんは、僕の頭を撫でながらさらに強く抱きしめてくれた。

「また子供扱いして…っ」
「何度でも言ってやる、可愛いオマエが悪い」
「もう」

思わず可愛くないことを言ってしまったのに、冬慈さんは笑って許してくれる。そのすべてを許してくれる優しさに惹かれるのだと、僕は改めて実感した。





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