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―――僕が目を覚ますと、そこにはもうヤナギさんはいなかった。
まだ朝は早く、うっすらと明るくなってはいたがこんなに早くに出ていくとは考えられない。
おそらく、ヤナギさんは昨日泊らなかったのだろう、と考えながら身体を起こすと、酷い激痛が走った。
「い……っ」
昨日無茶をされた場所は動くだけでひきつるように痛み、本来の目的である排泄ができるか急に怖くなった。
僕は思わずシャワールームに行き、昨日の行為の後を流すように湯を浴びる。
ヤナギさんが出したものが腿を流れていく感覚がとても気持ち悪く、二日酔いのせいもあってまっすぐに立っていられない。
痛む奥を耐えながら指で中の精液を掻きだしていると、急に酷いめまいに襲われた。
思わずそのままへたり込んでしまうが、僕は気合で立ち上がった。
……今日は、面接の日だ。
採用だと言われていても、受けなければ意味がない。
それに、タツミさんに雇ってもらうのに、無様な格好は見せられない。
僕はなんとか処理を終えると、朝の町に繰り出したのだった……。
―――僕が向かったホテルは、駅前のビジネスホテルだった。
テレビでもよくコマーシャルになっているし、交通の便もいいから人気のホテルだと聞いている。
部屋数も人気に比例して多く、12階建てからなるホテルのスイートルームも国内トップクラスだという。
正直そんな格式あるホテルに足を踏み入れるのも勇気がいったが、僕は思い切って入り口をくぐった。
フロントの横にいるドアマンに小さくお辞儀をして、フロントの人に声をかける。
「あの、本日面接に伺ったものですけど…」
「あぁ、朝比奈様ですね。お伺いしていますよ」
自分の名前に様をつけられると、なんだかむずがゆい。緊張してうつむいていた顔をあげて、僕は目を丸くした。
それは相手も同じだったようで、優しい笑顔から驚きの顔に変わる。
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