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……僕の生い立ちなんて、ありふれた不幸だ。

父親が借金を抱え、高校も満足に卒業できないまま仕事に明け暮れ、十六を過ぎたあたりで父が蒸発した。

母なんてものはとっくの昔に愛想を尽かし、再婚でもして幸せに暮らしているのだろう。

そんな映画やドラマの脚本で使いつくされたような、簡単な話。

蒸発と同時に降りかかった借金は利息を返すだけで精一杯で、満足にお金を返すことができない。

食事を一日一食にして、働ける時間をすべて働いてもそんなものだから、貸し手のほうが焦れたのだ。
なんてったってヤのつく自由業の皆様だし。

早速どこかに売り飛ばすつもりが、欠食児童がそのまま大きくなった僕なんかどこでも雇ってもらえなくて、行きついたのがこの店だ。

いわゆるゲイバーという奴で、ハッテンの斡旋もしているような場所らしい。

どんなに相手が見つからなくても店の子が相手をしてくれる、と下世話な噂で有名らしい。

そこの一員になるのに、僕みたいに薄汚いやつじゃ先輩たちも嫌がるっていうもんだろう。

でも、働かなくては。

僕の不幸なんて、大したことではない。そう思い込まなければ、負けてしまいそうだった。

でも、生きなくては。

生きていれば、もしかしたら両親が帰ってきてくれるかも知れないじゃないか。

生きていれば、僕が借金を消せれば、両親は幸せになれるんだから。






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