8(ヤナギ×)
※鬼畜、流血表現
―――ヤナギさんに引きずられてついた先は、手近なラブホテルだった。
嫌でもこれからを意識させられる場所に僕がおののいていると、ヤナギさんは僕を部屋のベッドに投げ込んだ。
その刺激に頭がぐらぐらして、本格的にお酒がまわって吐き気がしてくる。
でも、せめて文句ぐらいいたい、とヤナギさんを振り返れば、すでにヤナギさんは僕の上でマウントポジションをとっていた。
「……何するんですか」
「何って、ナニだろ?分かり切ったこと聞くなよ」
「だからって投げなくても―――」
「逃げたりしないってか?オマエは信用できないんだよ」
真上から冷たく睨まれ、僕はぐっと言葉に詰まる。この状態のヤナギさんに何を言っても拳が返ってくることは過去に何回も経験済みだ。
「オマエの親、ガキに借金背負わせて逃げるようなヤツじゃねえか。オマエにもその血が流れてるんだ、いつ逃げてもおかしくないだろ?」
僕はその言葉に、カッと頭に血がのぼるのを感じた。もう頭がくらくらしているのがアルコールのせいなのか、はたまた怒りのせいなのか分かったものではない。
「そんな汚い血が流れてるのに―――綺麗でいようなんて、笑わせるな」
「僕は、綺麗でいたいなんて思った事はありません!」
平気な顔をして親までなじるヤナギさんに腹が立った。
彼は僕を陥れたいだけ、挑発に乗るな、と冷静な僕が叫んでいるが、アルコールの前では歯が立たない。
「そんなに僕が潔癖に見えるなら―――証明してあげますよ」
「へぇ、どうやって?」
「どうって、ナニですよ」
僕はそう言い返すと、起き上がってヤナギさんのスーツに手をかける。ヤナギさんは僕に好きなようにさせていたため、ほどなくして彫り物が現れた。
ヤナギさんの身体には、多くの刺青があった。両腕には大蛇、背中には仏様、へその下には菊の花…そしてスラックスに手をかけ、彼の逸物を取り出す。
「――――っ!」
僕は一瞬、それを見て硬直した。
彼の逸物には、不自然なぼこりとした突起があって、それがやたらと存在を主張している。
初めて真珠が埋め込まれているのを直視して固まる僕に、ヤナギさんが馬鹿にしたように笑った。
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