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―――啖呵を切ったものの、新しい仕事を探さなければならなくなったわけで。

ヤナギさんが嘘を言うはずがないので、僕の手取りが本当にゼロになってしまうのを防ぐため、知恵を借りようと店長に相談してみた。

店長は僕の事情を察して親身になって相談に乗ってくれ、知り合いの何人かに掛け合ってくれることになった。

しかし、やはりここでもヤナギさんの言葉通り採用拒否が続出し、最終的に仕事が決まったのは二日後になった。

「ヒナ、あいつの事なら100%採用だが、一応日曜日面接いってこいな」
「はい!」

なんと、僕はタツミさんの経営するビジネスホテルの一つで働けるようになったのだ。

僕はバーの二階に住んでいるため、勤務時間に差はあれどバーには毎日顔を出している。

そのため夜の仕事は難しく、昼間のパートタイムの仕事を探していたのだが、ちょうどホテルの清掃員を探していたところらしい。

思わぬ天の巡り合わせに、僕は店長とタツミさんに心の底から感謝した。今度から、店長の夜食にもっと手の込んだものを作ろう。

そうして一つの悩みを解決したのだが、もう一つの悩みが残っている。

土曜日に来るといったヤナギさん。今までは土曜日が来るのが楽しみで、カレンダーの青い数字に花丸を書いたりしていたが、今度の土曜日はそうはいきそうにない。

しかし、どんなに来なければいいと願っても土曜日はやってきてしまい、ついに開店時間になってしまった。

本当は調理場に引きこもってひたすら調理をしていたいところなのだが、そこはヤナギさん、僕の嫌がることを全力でやってくる。

「―――よぉ、来てやったぞ」

開店からしばらくしたところで声をかけられ、ヤナギさんが来てしまった事を知る。まだタツミさんが来ていないため、必然的に僕がフルタイムで接客をしなければならない。

―――結局、タツミさんにも会えないことを言えなかったな…

タツミさんは基本的にかなり忙しい人らしく、どんなに時間をやりくりしても最近は土曜日のみしか来れないらしい。

しかも、日付が変わってから来ることもざらなので、連絡先を知らない僕は相手をすることができない旨を伝えることができなかった。

それが気にかかってしょうがないが、僕は観念してヤナギさんの接客についた。

ヤナギさんは強いお酒が好きらしく、ロックでアルコール濃度の高い酒をガンガン開けていく。

僕がそんなに飲めないことを馬鹿にして、僕のカルーアに炭酸を混ぜてきたりした。

しかし、僕にも意地があるので、そんなカルーアサイダーを一気飲みしてやった。その時のヤナギさんの顔がすごく楽しそうで、ちょっとムッとしたのは秘密だ。




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