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「――――っ!!そんな……」

もう一度、紙に書かれている文字を眺める。そこには、認めたくない現実があった。

「現実だ。お前の親父、さらにウチから300万借りていった。そんだけあれば高飛びできるだろうし、もう日本にはいないかもな」

突きつけられた現実に、僕は目の前が真っ暗になりそうだった。

まず感じたのは深い絶望。僕がどんなに探して、『会いたい』と願っていても会えなかったのに、こんなところで消息を確認するなんて。

それでも、それでも―――

「…生きててくれて、良かった……っ」

僕は紙をギュッと握りしめる。

僕たちのつながりは、こんな紙きれ一つしかないのだ。

どんなに会いたいと願っただろう。

どんなに、今も会いたいと願っているだろう。

この紙があるだけで、まだ希望はつながる。

この紙のせいでどんなに苦労しても、また頑張れる。

いろんな気持ちが溢れてきて、僕はうつむいた。ヤナギさんは不愉快そうに顔をゆがめると、煙草を一息吸って僕に吹きかけた。

「―――オマエのそういうとこ、死ぬほど嫌い。『勝手に借金増やしてんじゃねえよクソジジイ』ぐらい言えよ、気持ち悪いな」

「……そういうことは、面と向かって言わなければ効果がありませんので」

煙草の煙にケホケホとむせながらそう返せば、腹の虫が収まらないのであろう、あろうことかヤナギさんは僕の腕に煙草を押しつけた。

「あっ、――――っ!!」

あまり本気ではなかったらしく、僕が熱と痛みに手を引けばあっさりと煙草は離れていく。
僕は信じられない面持ちで煙草が触れた場所を見た。そこはすでにひりひりとした熱をはらんでいて、跡は残らないだろうが、しばらく痛みと戦うことになるだろう。

「―――っ!何するんですか!」
「そうそう、そうやって怒れよ。相変わらずいい子ちゃん過ぎて吐き気がしてたんだ。ちったぁ汚れろ」
「面と向かってなら、怒れますから」

僕はもはやお客様として扱う気になれず、今まで通りの対応に変えた。

すると、ヤナギさんは楽しそうに喉を鳴らし、僕の手から紙を奪い取った。





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