6




冬慈さんにそう聞き返され、僕は失言に気づいた。

酷くずるい言葉を吐いてしまった。

失望されたくない、このままでいたい、という気持ちが、僕を臆病にする。試すような言葉を口にしてしまうのは、不安だからだ。

でも、相手の気持ちを疑うほどみっともないことなんてない。

まして…相手は『お客様』なのに。僕が特別に感じていても、表面上の関係はビジネスなのに。

「…雪は、嫌なのか?」
「嫌じゃないです。でも…僕はこういうことをした経験がほとんどありませんし、僕ばっかり楽しくて、冬慈さんは僕に合わせてくれてつまらないんじゃないか…とか」
「ったく…余計なことまで考えやがって」

そういうと、冬慈さんは僕を膝の上に抱きかかえ、僕をギュっと抱きしめてくれた。

映画を見ていたテレビを消して、僕を両手で包んでくれる。

「…俺は結構心が狭いからな、嫌いな奴にはこんなことしないし、こんなふうになったりしない」

そう言って心臓のあたりに顔を押しつけるようにされると、そこが大きく脈打っていることが分かる。

僕と同じ…ドキドキしている。

でも、心音が重なり合うことはなく、僕とは違うことを感じる。

違うけれど―――同じ気持ちを共有しているのだ。

「…疑うようなことを言ってしまって、ごめんなさい」
「いいさ、それだけ俺に心を許してくれているってことなんだろう?」

嬉しそうに言われ、顔に熱が集まって行くのがわかる。

「雪は優しいからな、あまり自分の嫌な感情を口に出さないけど、それを言ってくれるんだ。嬉しくないわけないだろう?」

頭を撫でられながらそう言われ、泣いてしまいそうだった。

「冬慈さん……」
「そんな目で見るな。理性が切れそうだから」

思わず彼の名前を呼ぶと、そんなことを言われた。僕はたまらなくなって、冬慈さんに口づける。

「…僕に、理性を切らせてください」

僕はそういうと、冬慈さんの膝から降りて彼のベルトに手をかける。さすがに何をされるか分かった冬慈さんが身じろいだが、僕が見上げれば好きなようにさせてくれた。

「……んっ、ふ、」

冬慈さんの雄に手を添え、そっと舌を這わせる。以前ユウキさんに行ったときは無我夢中だったけど、冬慈さんのモノを舐めることに対して抵抗感はなかった。

むしろ、もっと―――

「冬慈さん…気持ちいいところがあったら言ってくださいね」

だんだんと芯を持ち始めたのを確認すると、僕は冬慈さんにそう言って行為を続ける。冬慈さんは何も言わなかったが、快感を耐えるように寄せられた眉根がたまらなく扇情的だった。




[ 29/90 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



top


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -