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冬慈さんにそう聞き返され、僕は失言に気づいた。
酷くずるい言葉を吐いてしまった。
失望されたくない、このままでいたい、という気持ちが、僕を臆病にする。試すような言葉を口にしてしまうのは、不安だからだ。
でも、相手の気持ちを疑うほどみっともないことなんてない。
まして…相手は『お客様』なのに。僕が特別に感じていても、表面上の関係はビジネスなのに。
「…雪は、嫌なのか?」
「嫌じゃないです。でも…僕はこういうことをした経験がほとんどありませんし、僕ばっかり楽しくて、冬慈さんは僕に合わせてくれてつまらないんじゃないか…とか」
「ったく…余計なことまで考えやがって」
そういうと、冬慈さんは僕を膝の上に抱きかかえ、僕をギュっと抱きしめてくれた。
映画を見ていたテレビを消して、僕を両手で包んでくれる。
「…俺は結構心が狭いからな、嫌いな奴にはこんなことしないし、こんなふうになったりしない」
そう言って心臓のあたりに顔を押しつけるようにされると、そこが大きく脈打っていることが分かる。
僕と同じ…ドキドキしている。
でも、心音が重なり合うことはなく、僕とは違うことを感じる。
違うけれど―――同じ気持ちを共有しているのだ。
「…疑うようなことを言ってしまって、ごめんなさい」
「いいさ、それだけ俺に心を許してくれているってことなんだろう?」
嬉しそうに言われ、顔に熱が集まって行くのがわかる。
「雪は優しいからな、あまり自分の嫌な感情を口に出さないけど、それを言ってくれるんだ。嬉しくないわけないだろう?」
頭を撫でられながらそう言われ、泣いてしまいそうだった。
「冬慈さん……」
「そんな目で見るな。理性が切れそうだから」
思わず彼の名前を呼ぶと、そんなことを言われた。僕はたまらなくなって、冬慈さんに口づける。
「…僕に、理性を切らせてください」
僕はそういうと、冬慈さんの膝から降りて彼のベルトに手をかける。さすがに何をされるか分かった冬慈さんが身じろいだが、僕が見上げれば好きなようにさせてくれた。
「……んっ、ふ、」
冬慈さんの雄に手を添え、そっと舌を這わせる。以前ユウキさんに行ったときは無我夢中だったけど、冬慈さんのモノを舐めることに対して抵抗感はなかった。
むしろ、もっと―――
「冬慈さん…気持ちいいところがあったら言ってくださいね」
だんだんと芯を持ち始めたのを確認すると、僕は冬慈さんにそう言って行為を続ける。冬慈さんは何も言わなかったが、快感を耐えるように寄せられた眉根がたまらなく扇情的だった。
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