5(タツミ×)


※挿入無し




――仕事が終わり、タツミさんに案内されるがままについた先は、とても高級そうなマンションだった。

見上げると首が痛くなりそうなほど高く、深夜にもかかわらずとても綺麗な外観をしているのがわかる。

思わず口を開けて見とれていたらしい、タツミさんが小さく笑ったのに気づいて慌てて下を向いた。

「気がすんだら行くぞ。…雪はまだ飯を食べてないよな?」
「、はい」

いきなり雪呼びに戻って、僕は思わずドキッとしてしまう。『ヒナ』から『朝比奈雪』に戻っただけだというのに、タツミさんに呼ばれれば特別な名前のように感じた。

「簡単な飯を作ろうか」
「はい、お手伝いします」
「頼もしいな」

エレベーターで上がり、タツミさんの部屋に入った途端優しくそう言われる。タツミさんの部屋はマンションの外観通りの高級感あふれる部屋だったが、キッチンはしっかり使い込まれているようだった。

無駄のない配置に感心しつつ、僕はタツミさんに向き直る。

「……冬慈さん、何作りますか?」
「そうだな…簡単にパスタでも作るか。雪、そこにあるホールトマト取ってきてくれ」
「はい」

冬慈さんが鍋を用事している間に、僕は言われた通りホールトマト缶を持ってきて、ついでに近くにあったパスタ麺も持っていく。

「ありがとう」
「冬慈さん結構料理なさるんですね」
「意外か?」
「はい」
「雪のくせに言うようになったな」
「ふふ」

冗談交じりに言えば髪の毛をぐしゃぐしゃと撫でられる。

そんな風に和やかに料理を用意して、笑顔で食事と皿洗いまでしたところで、タツミさんが借りていた映画を見ることになった。

こんなふうに誰かとゆったり過ごす、という経験がほとんどない僕に、冬慈さんは優しくエスコートしてくれる。

僕に合わせてくれているのが嬉しくも申し訳なくなってきて、僕はソファに座る冬慈さんにもたれるように座った。

「――雪、眠いのか?」
「眠くはないです。…嬉しいので、胸がいっぱいなんです」
「……だいぶ素直に甘えてくれるようになったな」

冬慈さんに嬉しそうに言われ、僕は胸がいっぱいになる。もうこれ以上いっぱいになることはないと思っていたのに、この人はどこまで僕の心を占めていくんだろう。

僕がそんなことを考えていると、冬慈さんは僕の手を握ってくれる。

「冬慈さん…僕とこうするの、嫌じゃないですか?」
「ん?」




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