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タツミさんは、車で来ているといった。もしかしたら忙しかったのかもしれない。

それとも―――自惚れかも知れないけど、本当に僕に会いに来てくれただけなのかも。

僕に誘われるためだけに、来てくれたのかも。

「へへ……」

自惚れだろうけど、胸の奥がポッとあったかくなるようだった。

ジンジャーエールを持ってカウンターに戻れば、タツミさんは笑顔で受け取ってくれる。

一口飲んで喉の渇きを潤すと、タツミさんは僕に車のキーを握らせて、こういった。

「…さて、俺は日曜日は完全にオフだ。…一日あればどこにでも行けるぞ?どこに行きたい?」

なんなら海外に逃げてもいい、なんて言われて、僕はくすくす笑った。どうしてこの人の前だと、こんなに安心するんだろう。

そして、それと同じだけドキドキするのはなぜだろう。

「…僕は英語が喋れないので、海外は無理ですよ。タツミさんと、ずーっと話せる場所がいいです」
「欲のないやつだな。うまい飯が食いたいといえば、いくらでも連れて行ったのに」
「食べ慣れていないものを食べたら、お腹壊しちゃいます」
「それを聞いたら高級料理店のオーナーが泣くぞ?――それなら、うちに来るか?」

うち、とはタツミさんの家のことだろう。確かに、こんな界隈では同性同士でいても怪しまれないが、昼間では見る人によっては奇異に映るだろう。

それなら、タツミさんの家の方がずっと一緒にいられるかもしれない。

「――はい、良かったらお邪魔させてください」
「決まりだな。…今日の店上がりは何時だ?」
「十二時です」
「なら、後三十分だな」

そう言って、無邪気に笑うタツミさんに、胸がギュッとなる。


―――あぁ、やっぱりこの人は特別だな。


この人の優しさに、父親を求めているのかもしれない、とも考えたけれど。

きっと、恋なんて言葉はふさわしくない想い。


『親愛』―――そう、これは『愛』だ。


確実にタツミさんに心惹かれている、僕はそれを感じながら、それでも満ち足りた気分だった…。






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