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「…外にゴミを捨てに行ってきました。あと、傘を貸してきました」
「ふーん」
「ってかそれで濡れてるとか、ヒナ本当にいい人すぎ。鳥肌立つー」
「ユウキは黙ってろ」

ユウキさんが茶化すように言ったのを、お客様がぴしっとたしなめる。ユウキさんがそれ以上何もいわない辺り、力関係は結構はっきりしているようだ。

「…ま、いいや。俺にもユウキと同じの作って」
「かしこまりました」

お客様はしばらく何か考えた後、僕にそう言ってきた。僕が言われるがままにお酒を造って渡すと、店内がざわついた。

何事か、とあたりを見渡せば、ユウキさんが説明してくれた。

「コイツ、顔だけはいいからいろんな奴から狙われてんの。そこにゲテモノがポイント稼ぎに来たから驚いてるってわけ」
「なるほど―――」
「ユウキ、ちっとはオブラートに包んだ物言いをしろ。それとそこのそばかすもあっさり納得してんじゃねえよ。貶されてるのが分からねえのかよ」
「本当のことですので…」

僕がヘらりと笑えば、ユウキさんが爆笑していた。お客様に至っては微妙な顔をしている。

その時、カランと店の入り口にあるドアベルが鳴り、僕はバッと顔を向けた。

「―――タツミさんっ!」

僕が入り口に真っ先に向かったのを、ユウキさんは『犬かよ』と笑っていた。タツミさんは迎えに行った僕を優しく抱きしめてくれる。

「おー、ヒナ。まるで保育園に子供を迎えに行ったような気分だ」
「子供っぽいって意味ですか?」
「いや、素直で可愛い、って意味」

僕がふてくされて見せれば、タツミさんは甘い顔でそんなことを言ってくる。早速赤くなってしまった顔を隠すように、僕はタツミさんをカウンターにひきつれた。

「今日は何か飲まれますか?」
「いや、今日は車で来ているから。…で、ヒナ、誘ってくれないのか?」

カウンターに座った瞬間そう言われ、僕は言葉に詰まる。

ずっと、なんと言って誘うか考えていたのに、タツミさんの前になると真っ白になってしまった。

「……じ、時間の許す限り、僕と一緒にいてください」

しどろもどろになってしまったが、考えていた通りそういえば、タツミさんは『よろこんで』と頷いてくれた。

「じゃあ、ノンアルコールの飲み物取ってきますねっ」

嬉しくておおきく頷いてから、僕はそう言ってカウンターの奥に消える。



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