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―――もういーくつねーるーとー

っていう童謡があったと思う。

僕の年末年始は郵便局だった。原付の免許をなんとか取得して、郵便局のバイトに明け暮れてたっけ。

それで年賀状の仕分けが終われば、神社の駐車場整備に精を出していたと思う。短期のバイトは割がいいから、甘酒を片手に来る日も来る日も働いていた。

童謡に出てくるようなお正月は覚えている限りした事がなかったし、それを悔やんだこともないけれど。

僕は久々に、そんなわくわくを味わっているのである。

「―――ヒナっ!付け合わせっ!」
「はいっ」

そんなことを考えながら食器を洗っていると、カウンターの方からユウキさんの声がして、僕はあわてて付け合わせの追加を用意した。

「あと、灰皿捨てて来い。煙草も忘れんなよ」
「はいっ」

相変わらずの女王様にこき使われながら、僕は付け合わせと灰皿を交換し、裏方まで灰皿の吸い殻を捨てに行くのだった。


―――今日は、土曜日だ。

もう三回寝ると土曜日だ、なんてあの日からずっとカウントしていて、今日はついにその日になったのだ。

自然と浮足立ってしまったが、今日は生憎の雨である。

夕方から急に降り始めた雨にタツミさんが濡れてしまわないか心配だけど、そんなことを言おうものならユウキさんから鉄拳をもらうので口には出さない。

「ヒナ、ついでにゴミも捨ててきてくれ」
「わかりました」

店長に言われるがままに、ごみ袋の袋口を縛って裏の方へ捨てに行く。

その時、ふっと横を見れば人が立っていて、僕は言葉を失った。

黒髪はしっとりと濡れそぼっていて、長時間ここにいることがうかがえる。顔立ちは決して華やかというわけではないのだが、よく見れば落ち着いた静かな美しさがあった。

お店の壁に寄り掛かるようにして、彼はずっとお店の方を見ているようだった。

「あの……お店に用事ですか?」
「っ」

僕が声をかければ、彼は驚いたように目を見張る。あからさまに警戒されてしまっているのが目に見えて、『この店の者なんですけど』と付け加えた。




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