小話【不器用×強気】
2012/12/31 13:14
ケンカ売ってるんだと思う、このでくのぼうは。
「お前女みたいだな」
「……」
裏庭の花壇に水をやっていると上から声がかかる。
2階の窓から見下ろす彼に、僕は深いため息をついた。
「…またそれ?いい加減腹立つんだけど。僕男だし。見る度そういうけど本当に僕が嫌いなんだね」
見上げながら言えば、でくのぼうはムッとした顔になる。
背が高くてイケメンでクールでかっこいい!なんて男子校でもてはやされても不愉快なのかもしれないが、いくら顔がチワワ寄りだからって僕にまで風当たり強くするのやめて欲しい。
いつまでも心の中ででくのぼうと罵るのも嫌だから言い返したのに、「そこで待ってろ」といって彼は消えてしまった。
さすがに怒ったのかなと思って大人しくしているとほどなくして彼がやってくる。
「俺がお前を嫌いだと?」
「そうでしょ?すぐ僕をバカにしてさ」
「バカにしてない」
「じゃあ何だって言うの?素直にいいなよ怒らないから」
段々苛々してきて言い返すと、彼はぽつりと呟いた。
「…可愛い、と思ってる」
「…え」
「ただ、なんと褒めていいか分からなかったんだ」
そう言って彼はバツが悪そうに顔を背けた。
「…そっか、そうなんだ」
あれは彼なりの褒め言葉だったんだ。自分の気持ちを素直に言えなくて、でも繰り返し、伝えようとしてくれてたんだ。
そう思うと、ゲンキンな僕の心臓がドクンと1つ跳ねた。
ーーーーさぁ、こんなでくのぼうを可愛いと思うこの気持ちは、なんだろう。
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