謙也はゲームの電源を入れた


…ブン

「ナンパしてみたら案外立ち止まってくれたわ」

今日は謙也がまず口を開いた
昨日の成果をまず話したかったのだ

「よかったやないですか」

「まぁ…そこまでなんやけど」

少女はフルフルと顔を振った

「後ろ向きになることなんてありまへんわ!成長してますで」

誉められているのか慰められているのか謙也は微妙な気持ちになり苦笑した

「手当たり次第もえぇっすけどあまりにガン無視や断られるんだ続くとへこみますやろ?やから、誘いにのってくれそうな女の子に声かけるっちゅー手もありますわ」

「なんやて!?」

目を見開いて食いついてきた謙也に少女はクスリと笑った

「例えばカバンが大きい子、もっと言えばカバンのサイズのわりにものを詰めすぎてる子なんかは、あれもこれもってギュウギュウにしてしまうんすわ。やからちょっとした誘いにも抑制がきかんくて流されやすかったりするんすわ」

謙也はコクコクと頷きながら聞いている

「あと話かけるときに「どこ行くの?」や「待ち合わせ?」「どこに住んでるの?」なんかは絶対にあかんすわ!」

「えぇ!?俺そんな感じで話しかけとったわ…」

謙也は昨日の自分を思い出す
ナンパといったらこの様な感じで話しかけるイメージだったのだ

「今のはどれも質問なんすわ。いきなり現れた人に何か答えたいなんて普通思わへんですやろ?」

「まぁ…確かに」

少女は小さくため息を吐いた

「最強のかけ声は「可愛いね、ちょっと遊ぼ!」ですわ。可愛いね、で率直に自分の印象を伝うて、ちょっと、でハードルを下げる。遊ぼ!で壁を感じさせずに誘う。普通っぽいけどこれが王道ですわ!」

少女はビシっと指揮棒を謙也に向けた

「これで明日までに女の子を誘って下さいね」

「あっちょい待ち!!」

そのままいつもの様に言うだけいって消えようとした少女を慌てて謙也は留めた

「名前、教えてや…約束したやろ?」

少女は目を見開いてから俯いた

「名前言っても意味ありませんわ…」

「え…?」

「うち、6日目過ぎたら消えますから…」

…ブン


それだけ言い残して少女は消えた

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