「なぁ…君可愛ええな。ちょっと遊ばへん!」







「阿呆やないですか!?」







あれから春が来て、初めての甘い思いは儚く散りそして初めての一目惚れというものを経験した
塗黒の長い髪に勝ち気がちな瞳
考えるより先に足が、口が、出た







「なぁ光は覚えとる?俺と光が初めて会った日ん事」

「覚えとるに決まっとるやないですか」

謙也の問いに隣に座っていた光と呼ばれた少女はクスクスと笑った
昼下がりの公園では子供連れやジョギングをしている人に自転車で横切る小学生なんかが思い思いの時間を過ごしていた
近所でも有数の広い市営公園の一角にあるテニスコート
2人はそこで軽くテニスをしてこれから遅めの昼食にでも向かうところであった

「なんや知らん金髪の先輩がめっちゃスゴいスピードで来るんですやもん」

思い出しながら光はクスクスと笑う
よほど衝撃だったらしい

「しゃーないやん、思うより行動のが早かったんや」

謙也はばつがわるそうに唇を尖らせた

「それで…部活行きますーゆう格好のうちに向かって…あの台詞て…」

「あの台詞バカにしたらアカンで!俺の最強の決め台詞なんやかんな!!」

「決め台詞って!」

光は尚も可笑しいとヒーヒー笑っている
謙也はとうとう臍を曲げてしまいそっぽを向いた
慌てて光はフォローに回る

「で、その効果はいかがなんですか」

言いなからちょん、と自分の手の甲を謙也の手の甲に当てた
すぐに意図を汲み取った謙也が指を絡める

「抜群やで」

そしてその手を示すようにちょっと持ち上げた

「よかったやないですか」

最初は思い切り否定した光だが懸命にアタックする謙也のひたむきさや真っ直ぐさ、それにテニスをしている時の真剣さ
色んな面をみるたびに自分にない輝きを持った謙也にいつの間にか心引かれ
今ではめでたく恋人という位置にいた


「感謝せぇへんとな」

ポツリ、と謙也が呟いた一言に光は首を傾げた

「誰にです?」

謙也は太陽の様に微笑んだ

「俺に勇気とか色んなもん教えてくれて、この台詞も教えてくれて子に、や」

光はそれをみて、ちょっとその子を羨みつつもそれを気取らせないようにそうっすね、と呟いた




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