「あ」

お手洗いから出たところで千歳は足を止めた







「う〜ん」

白石はパネルを見ながら頭を悩ませた
イタリアンにハンバーグ、石焼き専門店や串揚げ店なんかもある

「男の子って何がすきなんやろ」

決めておいて、とは言われたが男子との面識のない白石には千歳の好みがサッパリだった
嫌いな食べ物もわからない

「ん〜いくつか絞ってそんなかから選んで貰えばええかな」

そう完結させて再びパネルに視線を滑らせた時だった

「お姉さん」

後ろから声をかけられた

「1人?」

白石は恐る恐る振り返る
背中にツゥ…と汗が流れた

「良かったら、遊ばない?」

いたのは三人の男
しかし彼らの声はもう白石には届いていなかった

「あ…ゃ……」

男……怖い……!!
白石にはそれしか頭になかった
思考がぐるぐると巡る

「よかったらさ、」

1人が白石に手を伸ばした時だった

「いやや!」

「白石さん!?」

弾かれた様に白石は叫ぶと思い切りその男の手をはたいた
その声に丁度お手洗いから戻った千歳が駆け寄った
叫んだ少女に現れた大男
男共は慌てて去っていった

「白石さん大丈夫と?」

千歳の声に白石は小さく頷いたが肩は震え目尻には涙が浮かび、どう見ても大丈夫そうではなかった
千歳は涙を拭おうとそっと手を伸ばした

パシン

しかし、その手は白石によってはたかれた
千歳は目を見開く
しかしそんな千歳以上にショックを受けた顔をしたのは白石だった
申し訳なさそうに視線を泳がす
千歳は何もいわなかった
それからゴソゴソと鞄を漁ると中から小さな包みを取り出した

「本当は食事の時に思うたけんど、今のがよかそうとね」

そこから出てきたのは愛らしい、先ほどの映画に出てきた小人がモチーフになったハンカチだった
丁度お手洗いの前がハンカチのコーナーで先ほど白石のハンカチを駄目にしてしまった千歳は代わりに、と買ってきたのだ
ス、と差し出されたそれを白石はおずおずと受け取った
手にしたそれはほんのりと暖かかった