うん、わかっとった。なんかそんな気はしてた。

「光、一緒にお昼たべよ」

白石部長にそう言われてお弁当を片手に屋上に行ったらそこにいたのは白石部長…と千歳先輩と忍足先輩

「お、光ちゃんこっちこっち」

忍足先輩に促され忍足先輩と白石部長の間に座る

「ほな、たべよか」

「はぁ」

忍足先輩の言葉に合わせて弁当の包みを開く
とりあえず状況説明を白石部長に視線で求めたらニッコリ苦笑されたので苦笑し返しておいた
まぁ忍足先輩とお昼だなんてスゴく嬉しい事には違いないので喜んでおく事にする
けど、先ほどから忍足と肘がぶつかりそうになって気が気でない
忍足先輩は右利きでうちは左利きやから利き手同士が並んでしまっている

「あ、光ちゃんゴメン!」

そう思っていたらやはりぶつかってしまった
触れた部分がすごく、熱い

「あっ大丈夫ですゴメンなさい」

慌てて身をひこうとしたが白石部長が動いてくれなくてあまりズレる事は出来なかった

「つか、光ちゃん少なくない?そんなんで足りるん?」

忍足先輩が青い箸でうちの弁当箱を指した

「え、いつもと同じですよ?」

「えー絶対足りひんって!!」
忍足先輩のお弁当箱はうちの三倍は軽くある黒くて大きめの二段重ねので上段におかず、下段にご飯が入っている

「ほら、もっと食い?」

忍足先輩はひょいとうちの弁当箱に卵焼きを入れてくれた

「あ、ありがとうございます」

忍足先輩のそれ、を箸で摘む。間接キスやなんてらしくない事を考えて顔が熱くなった。きっと忍足先輩はただの後輩への親切で深い意味などないだろうに

「あ、甘い」

口に含んだそれはじわりと甘さの広がるあたたかい味だった

「あ、甘い卵焼き苦手やった?」

「いえ、大好きです」

そう言えば忍足先輩が嬉しそうに笑ってくれて

「一緒やな」

うちも嬉しかった



「白石さん、食欲ないと?」

千歳先輩の声に白石部長を見れば黙々と弁当を食べている、というよりつついて手は動いているが減っていない様だった

「え、あ、大丈夫やで」

白石部長は慌てて顔を上げた

「てか千歳くんパンなん?健康にわるいで?」

取り繕う様に白石部長が笑いなから言うと千歳先輩は苦笑しながら頭をかいた

「んーばってん、男が1人で弁当作るんも面倒すぎるばい」

そういえば千歳先輩は1人暮らしだったなぁ、なんておもいながら弁当を摘む
そしたら隣の謙也さんが思いついたように口を開いた

「やったら白石が千歳の分も作ってやったらええやん」

忍足先輩は空になった弁当箱のふたを閉じた

「白石は弁当じぶんで作っとんのやから、気になるなら作ってやればええやん」

そう言って白石部長を見る謙也さんがちょっぴり楽しそうに見えた

「せ、せやかて千歳くんにも事情とかあるやろうし、迷惑やろ?」

白石部長が縋るような目で千歳先輩をみた

「白石さんがよかとなら、嬉しいばい」

にっこり告げた千歳先輩に白石部長が俯いた

「じゃあ、しゃーないから…作ったるわ」

その白石部長の耳が真っ赤やった





「千歳、明日から毎日学校こいや?」

「そうばいね」


昼休みも残り五分となりゾロゾロと屋上を後にする時、がしりと白石部長に肩を掴まれた

「光…一緒に作らへん?」

「はい?」

「やから、弁当」

「え?」

「うちは千歳くんに作るけん、光は謙也に作ったりよ」

「えっでも…」

「謙也にはうちから言っとくさかい、な?」

「は…はい」


白石部長の必死っぷりに思わず頷いてしまった
忍足先輩は、どう思うだろうか
きっとあの人は優しいから喜んでくれるに違いない
そう思ったらなんだかいい気がしてきた






(右利きと左利き、いいなぁ)