「さぁーて、どこいこか?」

辺りをキョロキョロしながら忍足先輩がうちをみた
手は依然繋がれたまま

「決めてなかったんですか…」

うちはちょっぴり白石先輩と千歳先輩が気になって振り返ったけど見えるはずもなくまた忍足先輩に視線も戻した

「光ちゃん、なんや好きなもんある?ケーキとか、クレープとか」

奢ったる、なんて言われてしもた
なんやデートみたいや

「えっ、と…善哉とか、好きです」

そう言うと

「ほな、行こか」

そう笑って忍足先輩はまたうちの手を引いて歩き出した



忍足先輩が連れてきてくれたのはガイドブックにも載るようなちょいと有名な甘味屋さんやった
流石に平日のこの時間帯は人もまばらですぐに席に通されると忍足先輩が白玉クリーム善哉と抹茶餡蜜を頼んだ
暫くして運ばれてきたそれは器にこれでもかと小豆と白玉とフルーツが乗っててそこにソフトクリームが鎮座してるなんとも豪華なものやった

「すごい…」

思わず呟くと

「奢りやけん、遠慮せずに食べやー」

なんて言われて、忍足先輩はすでに抹茶餡蜜に手を出していた

「そういえばなんでうちん事繁華街なんかに引っ張ってきたんですか?」

「あ、あぁ…そういや言ってなかったな」

うちがのんびりと山を崩しつつ食べとるうちに忍足先輩の抹茶餡蜜は半分位になっとた

「んー白石へのお礼っちゅーか、お節介っちゅーか」

「白石先輩への?」

うちはあんこの絡まった白玉を口に含んだ

「いやな、白石の奴、千歳に一目惚れしたらしいん」

「ひっひと…!?」

びっくりして白玉を詰まらせたうちに忍足先輩が水を差し出してくれたのでありがたくいただく

「白石先輩…意外とワイルド系がタイプなんですね」

「まぁ案外お似合いな気もするけどなー」

食べ終わった忍足先輩が手持ち無沙汰にスプーンをくわえながら言った

「そう…ですか??」

「おん、白石の窮屈な完璧さを千歳の緩さなら包んでやってくれそうな気がすんねん」

なんだか照れたように笑う忍足先輩はちょっぴりかわいらしかった

「忍足先輩は白石先輩が大事なんですね」

「おん、家族みたいなもんやからな」

忍足先輩が他の女の人を思うのは嫌やけど白石先輩なら別に良かった
本当に2人は家族みたいで、近くて、ちょいと羨ましかった




「今日は突き合わせて悪かったな」

「いえ、うちも楽しかったですわ」

結局あれから小一時間喋ってからうちが払うと言ったにも関わらず忍足先輩に善哉をご馳走になり、それからうちの前まで送ってきてもらった

「白石先輩達もうまくいってたらええですね」

「せやな…なぁ、光ちゃん」

「はい?」

段差の関係でのぞき込むように忍足先輩を見れば頭を撫でられた

「良かったら、また行こな」

「…っ、はい!!」