どうしようどうしようどうしよう
とりあえず状況を整理しよう
うちはいつも白石先輩と帰宅してる
(小石川先輩はたいてい石田先輩と帰る)
けれど今日は白石先輩が学校から直で家族と外食に行くので一緒に帰れない
なので白石先輩はたまたまソコにいた忍足先輩にうちを家まで送るよう頼んだ
うちは何を言う暇もないまま流されて
白石先輩に半ば無理やり背中を押されて


忍足先輩と帰宅中


「あかん…ますます混乱してきた」

「ん?光ちゃんどないしたか?」

「っ大丈夫です!!」

とりあえず落ち着こう。落ち着けないけど
会話だって全く頭に入ってこない
忍足先輩の顔がみれなくてずっと俯いてしまっているし

「なんかゴメンな、光ちゃん」

「へ??」

そんな事を考えとったらいきなり謝られて思わず顔を上げれば眉を下げた子犬みたいな忍足先輩の顔

「俺ばっか喋っとるし、つまらんよな」

忍足先輩は苦笑しながら困った後頭部をかいた
そういえばうち、さっきから下ばっかり向いて生返事しかしてなかった気がする
ダメやんかっそないやから忍足先輩に気を使わせてしまうんや

「そっそないなことないです!うち、忍足先輩とお話できてめちゃくちゃ嬉しいです!!」


慌てて弁解したらなんだかまくしたてる様になってしまい忍足先輩もポカンとしてしまった
かと思えばプ…と小さく吹き出した
こんどはうちがポカンとしてしまう

「なんや、かわええな光ちゃん」

忍足先輩はまだクスクス笑っている
顔に熱がたまるのがわかった

「ありがとう」

そう言って頭を撫でられた
顔が、さらに、熱い
うちは俯きたくなるのを必死に耐えて忍足先輩を見ていた
忍足先輩は相変わらず笑っていた




「ここなん?光ちゃん家」

閑静な住宅街の一角にうちの家はある

「はい、ありがとうございました」

「いや、ここ通り道やし全然気にせんといてええよ」

「………え?」

「いやな、この道ずっと行った交差点を左に曲がって進んでくと忍足医院ってあるやろ」

「………は……い…」

「そこやねん、俺ん家」

確かに…近い
昔はよくお世話になっていたし名前が同じなのも気づいてはいた
でもまさかそこが忍足先輩の家だとは思いもしなかった
確かにそこから学校へ行くなら我が家の前を通れば学校前へと続く通りに出られる為いい

「あ、せや!!」

「はい?」

「なんなら明日から一緒に学校行かへん??」

うちはまた言葉を失った
今日は色々起こりすぎな気がする

「どうせ朝練あるんやし、あっ迷惑なら言ってな?」

「めっ迷惑やなんて!!」

無意識に声を荒げてしまう
門越しでこちらが一段高い分、普段は見上げる顔が間近にあり思わず視線を逸らす

「忍足先輩が良ければ…ぜひ」

うちがそう言えば忍足先輩はニッコリと笑ってまたうちの頭を撫でた