「え、ほんまですか?」

今日は会ったら体育の有志を讃えてあげよう
そう思いながら部活に向かうといつもより人が少なかった
よくよく見れば男子テニス部がおらんかった
普段は女テニと男テニで第一コートと第二コートを交互に使っている
オールコート使えるんは休日練習、もしくは男テニとの合同練習時のみだ
しかし今日はなんでも来週に控えた学年合同の長距離体力テストに向けて男テニは外周を行うらしい

「なんや、残念そうやな」

ニヤニヤしながら白石部長にそう言われて初めて自分が肩を落としていたことに気づく

「そっそないな事ありまへん!」

思わず声を荒げてしまったうちを一層笑みをしながら「へぇ〜」なんて言ってそのまま白石部長はコートへと言ってしまった
うちは小さく色んな意味をこめたため息をつくと着替えるために部室へと向かった

その日は第一コートではレギュラー同士の軽試合、第二コートでは他部員のラリー練で終わった
練習中に終始、小春先輩の名前を呼びながら淋しいと連呼していた一氏先輩を見ながら少し、そのウザイくらいの素直さが羨ましく思えた

部活後、校門前に小春先輩を待ち伏せしにダッシュで着替えて部室を出て行った一氏先輩を皮きりにポツリポツリと着替えを済ませみな部室を出て行く
窓から石田先輩が部室を出たのを見てソワソワし始めた小石川副部長を白石部長が追い出してやれば部室には私と白石部長だけになった
うちは時期部長を白石部長と顧問から任せられる事になってから毎日白石部長と(今日は帰した)小石川副部長の仕事を見て、手伝って、一緒に帰るのが日課である
白石部長が日誌を書くのを見ているとコンコン、と部室の扉がノックされた

「とうぞー」

白石部長がそう言えばゆっくりと扉が開いた

「あ、」

「なんや、白石と光ちゃんだけか?」

扉をあけたのは制服姿の忍足先輩やった

「なんや謙也か、外周おつかれさん。どやった?」

「おぉ!モチのロンで1等や!浪速のスピードスターは伊達やあらへんで!!」

白石部長にピースをしながら笑顔で答える忍足先輩
今なら、言えるだろうか

「体育の100mも1位でしたもんね」

さりげなさを装ってそう言えば忍足先輩はこちらをみて目を見開いた

「なんや光ちゃんみててくれたん!?」

さっき白石部長に向けたみたいな笑顔で少し照れたように後頭部をかいている嬉しいけどむずがゆい、そんな感じだ

「圧勝でしたよね、おめでとうございます。来週も頑張って下さいね」

思わず肩に力が入って普段と違う声色に自分で笑えそうだった

「おぅ!頑張るけん応援したってな!!」

ガッツポーズを取りながら言う先輩に思わず笑みが零れる
言ってよかった

「つか謙也は何しにきたん?」

白石部長が忍足先輩をシャーペンで指しながら本題を促した

「あ、せやせや。俺これから日誌出しにいくからコートの鍵貰いに来たんねん」

その事を示す様にヒョイと片手に持っていた部日誌を持ち上げる

「あぁ、ええよそんなん。コートの鍵も日誌もうちが出しといたるから、そこ置いとき」

白石部長が包帯を巻いていない右の人差し指でトントンと机を叩く

「えぇ!?そんなん悪いやん!!」

「別にええって。そん代わり、光を家まで送ったってくれへん?」

「「………へ?」」

淡々と告げられた台詞に思わずうちも口を開いた

「いやな、うちいっつも光と帰ってるねんけど今日はこれから親と外食で校門まで迎えやねん。やけどまだ夕方は薄暗いし女の子1人で帰らすには心配やん、やから謙也にお願いしたいんやけど」

白石部長を見れば爽やかな笑顔で忍足先輩を見ている
首筋に一筋の汗が伝う

「そーゆう事ならええでっ!」

忍足先輩は白石部長に日誌を渡すとこちらを振り向いた

「光ちゃんの家ってどの辺なん?」

「えっ!?えっと…」

「帰り道のコンビニある交差点左曲がってすぐ位やねん。多分うちん家と光ん家の間位が謙也ん家や」

話の流れについていけない私を置いて白石部長が着々と話をすすめている
よくよく考えずとも白石部長はうちと忍足先輩を一緒に帰らそうとしてんのやろ?
一緒に帰るって、それ、すごいことなんちゃう?

「じゃあうちも日誌書き終わったし、帰るか」

「せやな」

忍足先輩が扉へ向かう
とりあえず続いて部室を出ようとしたら後ろから腕を引かれた

「謙也はいい奴やけど鈍いかんな。ま、がんばり」

そう、耳元で白石部長に囁かれた



どうしよう






(続きます。進まない。白石は楽しんでます。確実に。)