(あ、忍足先輩や) 退屈な授業中にふと左手の窓からグラウンドを覗けばあの輝かしい金髪を見つけた 四天宝寺の体育は2クラス合同で行う まして今日は男女共にグラウンドらしく視線を泳がせれば白石部長がストレッチをしていた (白石部長よりあんな目立つ頭してる忍足先輩が先に見つかるなんて別に当たり前や) そう誰を相手にするでもなく心の中で自分相手になんとなく言い訳をしてもう一度グラウンドを覗く 3年生は体力テストの種目がまだ終わってないらしく今日は100m走らしい 先生がグラウンドを斜めに横断させて100mの直線のラインを描く なんでも記録用紙の整理がしやすいよう逆名前の順でやるらしく忍足先輩は一番最後やった (あ、確かあの人…) 忍足先輩と一緒に走る面子の中には陸上部のホープやバスケ部の部長なんかもいた (忍足先輩もあわれやなぁ…) あの顔ぶれじゃ並大抵の速さではかなりの差を開かれてしまう 部活で見かけたら励ましてあげよう、なんて思っているうちに振り挙げられた旗を合図に先輩等が一斉に走り出した 「…………嘘」 圧勝やった忍足先輩の 流石は浪速のスピードスターを自負するだけはある走りっぷりで始めは均衡だったが中盤一気に忍足先輩が他の先輩等を引き離してのゴールだった 笑顔でクラスメートとハイタッチをかわす忍足先輩 うちも、あと4ヶ月早く生まれていたらあの中に入れたんやろか (うちも忍足先輩とハイタッチしたかったなぁ) とりあえず部活に行ったら凄かったですねって言ったろ、なんて思うと同時に思考の隅へと追いやられていた白石部長を思い出した 辺りを見渡してみるといつの間にか女子は整列しておりその中にいた白石と思い切り目があった 口角を吊り上げてニヤリと笑ったかの様に見えたのは気のせいだと思いたかった (つい謙也を目で追ってしまう光ちゃん) |