「ちゅー訳で、うちらに料理を教えて欲しいんや」

放課後、白石部長とともに頭を下げてる相手は小石川副部長と一氏先輩。いつも恋人に弁当を作ってあげているお二方(一氏先輩と小春先輩は交代らしいけど)の腕前はうちらも知っとる程、確かだ

「うちでええんなら構わんけど…」

「なんや、甲斐性なやっちゃな」

ケラケラと一氏先輩にからかうように笑われてちょっと恥ずかしかった

「せやったら明後日うちくればええよ、どうせだれもおらんし部活もないし」




そんな小石川副部長の提案に甘えうちと白石部長はエプロンを持参し、今に至る

「にしてもあんた等がそこまで進展しとったとはねぇ」

「告白はどっちからしたん?」

「…!?!?」

ウインナーをフライパンのうえで転がしていたらいきなりそんな事を言われて手が止まってしまった。卵焼きを作っていた白石部長も固まっている

「白石、焦げるで」

一氏先輩に言われて慌てて菜箸をフライ返しに持ち直して丸める白石部長の顔は見るからに真っ赤で、おそらく自分もそうなのだろう

「光、ケチャップで和えよか」

小石川副部長にフライパンを渡せば慣れた手つきで味付けをしている。ケチャップで味付けした方がご飯のおかずになるらしい。どんな味付けが好きか、どうしたら喜んでくれるか、そんな事を考えながら誰かの為に料理をするなんて少し前の自分では考えられなかった。それもこれもみんな忍足先輩のせいで、しかしそれは嫌ではなくむしろ嬉しい

「で、どっちから告白したん?」

小石川副部長がお皿にウインナーを移しながらニヤニヤして聞いてきた

「……まだ、してません」

小さな声で目をそらしながら言えば凄く驚かれた

「一氏、今の聞いた?」

「安心しい、白石もや」

二人が同時に大きくため息を吐いた。二人はてっきりうちが付き合ってると思ったらしい。本当にそうならどんなに嬉しい事か。
でも、一緒に登下校したり、お昼ご飯を食べたり、お弁当を作ったりして忍足先輩に一番近い女の子(もちろん白石部長は別として)だとは思ってる

「小石川副部長はどっちから告白したんですか?」

ちょっと、気になったので話を反らすのと反撃もかねて聞いてみたら小石川副部長は漁っていた冷蔵庫をパタンと閉じた

「うちからやで」

「小石川副部長から?」

小石川副部長はちょっぴり苦笑した

「銀は、うちが言わなかったらずっと言わんつもりやったみたいやし」

確かに、って思った。それから危ないし勿体無いって。今はすごく仲がよくてそれこそ夫婦みたいな二人にそんな事があったなんて、もしかしたら二人が付き合ってなくてもっとドライな普通の友達で、でも内では相愛だったりなんかしたら切なすぎる。二人共、感情を隠すのも殺すのも上手だから

「なぁ、光」

小石川副部長がゆっくりと頭を撫でてくれた

「気持ちを伝える事を迷ったらあかんで、後悔は伝えてからもできるんやから」

小石川副部長の目がすごく優しくて、涙が出そうになった
それから、たまらなく忍足先輩に会いたくなった