「キレイなモノほど壊したくなりませんか?」
いつかの寒い朝に部室の壁にもたれながら生えた霜柱を踏みつぶしながら無邪気にそう言って微笑んだ後輩の気持ちが始めてわかった







「ほら…水だ」

こちらに背を向けたままピクリとも動かない彼女に透明なガラスコップに入れた水を差し出すが何の反応も示さない。飲まなくて辛いのは自分であろうに

「あんなに声を上げて、喉は痛くないのか?」

パシャン、と音を立てて振り向かれないままに手を払われた。持ったままだったガラスコップがベッドに音も立てずに落ちシーツに水が零れた。

「これは…いけないな」

未だ寝そべる彼女に上半身を多い被せる様にして耳元でワザと声を低くして囁いた。ビクリと大袈裟なほどに肩が震え、思わず声を立てずに笑った
あの台詞を吐けば彼女の逆鱗に触れることなど容に察しづいていたし、その彼女が怒りで俺の手を払うことも

「お前がした事はいけなくないのかよ」

ぼそりと呟かれた言葉にまた笑みが零れる。

「はて…一体何のことだ?」

ギリッ…と音が鳴るほどに歯ぎしりをしたのがわかった。怒りからか屈辱からか羞恥からか、わなわなと肩が震えているのに気づかない振りをした




勝手に自分の中の神として奉り触れることすら恐れていた彼女を組み敷くのは存外呆気ないことだった。無力に暴れる彼女を使い押さえ込むことも。そこまで来てしまえば後は流れるだけだった。一度罅の入ったダムを決壊させるのはほんの少しの力添えさえあればいいのだ。例えば、彼女の口から零れた俺以外の男の名とか





「もし…これが俺ではなく真田だったならお前は…っ!」

パシンッ…

と、いう音がして頬を叩かれた。あれほど微動だにしなかった彼女はアイツの名前をだせばすぐさま上半身を起こし振り向き、そして俺に平手打ちとは。そんなに潤んだ瞳で睨まれたところでせいぜい欲情する程度の効果しかない事を昨日あれだけ体感したくせに未だに理解していないのだろうか。まして肩まで震えている。愛しさは湧いても恐れなど。
そう思って笑うとますます顔を険しくさせた。美人は怒った顔が一番美しいのは本当かもしれない。迫力も申し分ない。繰り返すがその瞳が潤んでなければの話だが。
おそらくアイツは彼女のこんな表情などしる事は一生こないのだろう。そう思うと耐えようのない征服感に襲われ、もっともっと俺しか知らない彼女を見たくなってきた





ギシリとベッドが軋んだ音を立てた
昨日よりも一層弱い抵抗につり上がる口元を抑えられない
例えば今この場所にアイツが来たらどうするのだろうか。アイツは俺を殴るか、それとも見なかった振りをして立ち去るか。彼女はアイツに助けを求めるか、それとも見るなとばかりに縮こまるか。


俺が携帯電話に手を伸ばしたことに彼女は気づいていない





そんな戯曲はいかが?
(悲劇の主人公はいったい誰か)





柳が悪い男でごめんなさい。三巴は萌の塊だと思います。こんどはもっと普通の三巴(は?)を書きたいです




*