「あぁもうあいつら!」

白石はゴミ袋に空き缶を投げ入れた
先ほどまで狭い部屋にたむろっていた面子は全員帰り男が集まり散乱した部屋を白石はゴミ袋片手に周りながら片付けていたのだ

「あぁもうプラスチックとティッシュまとめんなや…!」

「くらお疲れさま〜と」

ゴミの分別をしていると後ろから温かい塊に抱きしめられた

「そう思うなら手伝い」

「手厳しいとね」

白石は体を捻るとゴミ袋を千歳に押し付けた

「また髪拭かんで出てきおって」

毎年恒例となった千歳宅での飲み会
いつもの面子を帰したあととりあえずと風呂に入れられた千歳のほかほかとした髪の毛からはポタポタと滴が落ちてきていた
白石はそれを首にかかっていたバスタオルで拭う

「ほら、紅白みたら鐘突き行くんやろ」

「うん」

千歳はガサゴソとビニール袋を縛る
毎年恒例なのだ
飲み会をして、年が変わる前に解散して、各々で年明けを迎える
そしてまた神社で再開するのだ


「くら…」

「ん?」

「今年もありがとね」

「こっちこそ、おおきにな」

いつも通りの年をいつも通り過ごして迎えられた
それはいつも通りで、普通で、当たり前で
それがひどくひどく嬉しい
特別な日には、当たり前が愛おしく感じる

「今年もくらと過ごせて幸せとよ」

「うちも、幸せやったで」

「だから来年もまた宜しくと、ね」

「もちろん、こちらこそよろしゅうな」

白石がそう言うと千歳はゆっくりと口づけた
これもまた恒例なのだ
口づけの向こうで日付変更の鐘が鳴った

また君と幸せな年を歩めます様に