「さっぶいなぁ〜」

ソワソワして、あんまり眠れなくて
待ち合わせよりも一時間以上はやく来てしまった
近所にあるわりかし大きな神社は人でごった返している
近所の老夫婦らしき人、小さな子の手をひく親子、男同士のむさい集団なんかもある
みんな新年という空気にあてられて陽気に笑っていて見ていて楽しい
ズズズ…とバイトの巫女さんが配っていた甘酒をすする
舌が熱でピリピリするが甘酒はこの位が一番美味しいと思う
しかし猫舌の恋人は飲めないだろうな、なんて思う自分に苦笑した


「あれ、謙也?」

「ほんまや」

ふと、耳慣れた声に呼ばれてみやればよく見知った顔がある

「白石、それに千歳」

「あけましておめでとう」

「おめでとさん」

言われてこちらも返す

「あれ何で2人が一緒におるん、白石と千歳ん家って真逆やないっけ?」

ふ、と思う
白石と千歳の家はここからだとちょうど東西真逆の位置にある
落ち合うならここで落ち合うのが良作だろう
しかし鳥居で待っていた謙也のとこに2人は揃ってきた
先にでかけたにしても繁華街などとも違う方向からだ

「そ、それは…」

白石が口ごもる
俯いた頬に朱が刺しているのが伺えてしまった、と思った

「くら、昨日うちに泊まったけん」

「ちっ千歳…!!」

やっぱりな、と思った
しかも千歳が白石の腰に手を当てて引き寄せた時に白石が一瞬だけ顔をしかめたのに気付いてしまい昨夜の2人の様子を察してしまった自分にまたげんなりした



2人仲良く去っていった背中をみながら謙也は愛しい恋人を思いながら冷めきった甘酒をまた啜った






みなさまにとって素敵な一年になりますように!!