この星が生まれて

沢山の命が生まれて

自分が生まれて

君が生まれて

そして出会えた


それは、奇跡なんじゃないだろうか






『大丈夫、待ってる』

告げられた言葉に遠山はため息を吐いた
いわれた言葉にではない
言わせてしまった自分にだ

「ごめんな…」

『別に遠山が悪い訳じゃないよ、天気と運が悪かっただけ』

「そない言ってもなぁ…」

電話の相手の越前は今アメリカにいる
遠山は彼女の誕生日に合わせて渡米する予定だった
本当はもう少し前もって向かいたかったのだがテニスの大会やら学業やらのおかげで
どうにか都合がついたのが24日に着という事だった
しかも空港に到着するのは夕方で彼女のアパートに着くのはおそらく夜中になるであろうというギリギリのスケジュールだった
これでも頑張ったのだ
昨日大会が終わり単位に必要な書類を早朝に提出しに大学へ向かい東京へ向かったのだから
しかし、越前の言う通り運と天気が悪かった
こちらは割と晴れている
しかし到着先が昨日から豪雨なのだという
遠山は動かない飛行機に搭乗したまま再び大きなため息を吐いた
遠山は誕生日というものが大好きでひときわ大切な日だと認識している
まして大事な人が生まれた日なのだから
祝ってあげたいしお礼もいいたいし、めいいっぱい愛してあげたい
ただでさえなかなかに会えないのだから
遠山は海の向こうの恋人を思いながらリクライニングを倒した
昨日の疲れもあるし何より今日は早起きだったのだ
眠気がすぐそこまできていた







越前は部屋の明かりを消した
カーテンの向こうは街中がイルミネーションされていて眩しい位だ
それを一瞥してからモスグリーンのカーテンを引いた
真っ暗になった部屋で、テーブルの上のキャンドルに火を灯す
サンタクロースの沈んだそれは去年貰ったものなのだが去年のクリスマスではサンタを救出できなかったのだ
これをくれたやたら元気の有り余る彼を思い出し思わずクスリと微笑んだ
どうしたの?とばかりにカルピンがすり寄ってきた

「遠山、今日はこれないみたい」

ニュースで飛行機が動き出したとの知らせは受けたがあの時間に再開したのなら越前のいる都市にくるには途中で電車が無くなってしまうだろう

「なぁ〜」

慰める様に鳴かれて越前はカルピンを抱き上げた

「ちょっと、寂しいな」

越前はカルピンの頭を撫でながら蝋燭を見つめて呟いた


、時だった



ドン、ドンドン、ドンドンドンドンドン

「…!?」


急にドアを連打する音が聞こえた
今は深夜だ
けれど越前には扉横のインターホンを使わずにドアを叩く人物など1人しか思い浮かばなかった

「………嘘」

スルリとカルピンが腕から下りた
越前は思わず玄関に駆け寄った
鍵に手をかけ、回し、開く
それだけがひどくもどかしかった

ガチャリ

「コシマエー!!」

「あっちょと…うわ!」

扉が開いた途端に飛びかかられて越前は思わず後ろに倒れ込んだ
思い切り抱きしめられていたためさほど衝撃はなかったがやはり驚いた

「なんで?電車…」

「せや!電車途中で無くなってしもうて走ってきたんねん」

「走って!?」

そういえば中学時代に彼が大阪から東京まで走ってきた事を思い出した
ギュウギュウとしがみついてくる頭を撫でていると遠山はいきなりがバリと顔をあげた

「せやっまだ間に合っとるよな!」

遠山が確認した時計は越前が以前贈ったものだ
大事にしてくれているらしい

「誕生日おめでとう」

ニカっとあまりに嬉しそうに笑うものだから越前も嬉しくなって笑った

「ありがとう」



HAPPY BIRTHDAY
10.12.24