「光っほら…かき氷!」

謙がはしゃいだ声をあげて光の手を取った
こちらはいつ手を繋いでやろうとタイミングを見計らっていたというのに
こういうのがこの人の、天然のズルいとこだと財前は思う
慣れない下駄で走りだそうとするものだから繋がった手を引いて牽制する

「こけますよ、かき氷は逃げまへんから」

言えば謙はぷくりと頬を膨らませた
謙は白地に黄色と桃色の花が描かれた可愛らしい浴衣を身につけている
濃桃の帯も淡い桜色の花をあしらった髪飾りも女の子らしくてとても可愛らしい
普段は短いスカートはためかせて、その下の色気無い長めの黒いスパッツを晒しながら廊下を走ったり、テニスの授業で男子負かせたり、なんてしているようには思えない
髪を上げたせいで真っ白な項が少し視線を下げただけでいたいくらいに目に入る
普段着ならまだしも浴衣での項はこう、いつもに増してくるものがあると思うのは恐らく自分だけではないだろう
そう順案している光を引っ張る様に謙はかき氷の屋台へと向かう

「うちブルーハワイな!光は?」

「いちご」

「なんや光かわええな」

「ガキみたいな味覚しとる人に言われたなないですわ」

「いちごも変わらへんやろ!!」

たっぷりとシロップをかけてもらい練乳もかけてもらった
それから花火をみる為に移動する
ちょっとした高台になっている小さな祠がある境内は普段から誰もおらず地元の人でもなかなか知らない穴場である
ピョコピョコと歩きながらかき氷を美味しそうに食べる謙さんは本当に可愛らしい

「光っ見てみて!!」

こちらを向いた謙さんが口を大きく開けた

「真っ青?」

「人間の色しとらんっすわ」

謙さんの舌は彼女の言う通りブルーハワイのシロップで真っ青やった

「そうゆう光はどうなん?」

「俺はいちごっすからね」

んべ、と自分の舌を出せば謙さんは不満そうな顔をした

「なんかズルい」

言っている意味がよくわからない
けれどそれすら可愛いなんて思ってしまうのは贔屓目だろうか

「なら、」

そっと自分の舌を唇を、謙さんのそれに近づけて、重ねた
後ろで花火の上がる音がして辺りが黄色く照らされた
けれどそんなの気にしてられなくて、彼女の色を移すように拭うように舌を絡めた
俺の着物を掴む謙さんの指を剥がして自分の指と絡めた
そっと唇を離して彼女へ向けて舌を出す

「色、移りました?」

彼女は俺の舌をみて、一瞬視線をさまよわせてから言った

「あんまりわからへんからもう一回」

やっぱりこの人は可愛いすぎる