「真田は想像したことある?」


名前を呼ばれてそちらを見れば幸村は依然と雑誌に視線を落としていた
日も高く上がっているこの時間帯
外は暑いからイヤだとゴネた幸村と2人、手狭いソファに腰掛けながら互いに本を読んでいたのだ
この白いソファはこの部屋へ越してきた際に幸村が一目惚れした品だ
向かい合わせに置かれたテレビは朝のニュース以外であまり役目はない
俺も彼女もあまりテレビ番組をみる質ではなかった

「……何をだ?」

手元を覗きこめばあまり幸村の雑誌は進んでいなかった
ページの中でポーズを決める女が着ているふんわりとした花柄のワンピースはきっと幸村に似合うだろうな、などと思った
そんな幸村はいま肩を出すデザインの五分袖のゆったりとしたボーダー柄のトップスに短いデニムズボンという涼しげな格好をし、最近流行りだというリボンのようなヘアバンドのような、むしろはちまきのような、髪飾りをしていた

「例えば、私が明日死んじゃうとか、地球が滅びちゃうとか」

「幸村!!」

真田は慌てて声を荒げた

「例えばだってば、例えば!!」

幸村は雑誌をバタリと閉じると此方に向き直った
真田も読んでいたのだ本を閉じる

「そしたら、もうキスだって出来なくなるんだよ?」

幸村はズイっとこちらに顔を近付けると頬をぷくりと膨らませた
真田はその顔を見ながら雑誌を横に置くと、右手でその頬を押した
プスッと音がして尖らせた唇から息が漏れる
顔を真っ赤にした幸村が慌てて掌から逃げようとしたのを許さず、真田はその可愛らしい唇にキスを落とした