右目がズグズグと疼く こんな日は無性にイライラする 思い頭と足を引きずるように錆びた階段を上って自室を目指す 言いようのない衝動がひっきりなしに背中を這っている 鍵を、とポケットを漁ろうとしてふと気がつく 一人暮らしの自分の部屋に明かりが灯っている それがいいのかわるいのか、そんな事わからなかった しかしただ唇だけが無意味につり上がった 鈍く光るノブに手をかけて回せば軽い音がした 暖かい部屋に入るとパタパタとかわいらしい足音が近づいてくる 顔を上げずに下駄から足を外しながら敷居を跨いだ 「千歳!こんな時間までなにし…っ!?」 目の前に小走りしてきた彼女の話を聞かないまま荒々しく口を吸った 夕飯を作っていたのだろう、惚けた顔をしたキャラクターの刺繍が施されたエプロンからはほんのりと香ばしい香りがする しかし、今欲しているのはそんなものじゃない 咥内を蹂躙して、砕けた彼女の腰を支えながら唇を離すと乱れた呼吸でトロンと溶かされている瞳も見ずに低く囁いた 「抱かせて、」 「はっ…はあぁんっ!ひぅ!!」 白石は薄っぺらい布団にうつ伏せになりながら腰だけを高く上げた体制で足を開き千歳の肉棒を受け入れていた 布団に被せられたシーツを掴む手は既に力が入っておらず腕で体を支えることもままならないため肩で支えているような状態だ しかし実際は千歳がしっかりと腰を掴んでいるからでその手を離されたらすぐさま蛙のように這いつくばってしまうだろうと容易に察することができる 布団に投げるように組み敷かれた直後に乱雑に衣服を剥ぎ取られ一糸纏わぬ白石の体は白く月明かりしかない寝室でもよく見て取れ、腰を打ち付けられるたび布団に胸の飾りを擦り付けられそこは痛々しい位に赤く熟れている しかし千歳はそんな事には目もくれず一度も触れてはこないが既に開発された躰にとってそれはヒドく鋭利な刺激であり強く擦り付けられるたびに中のものを締め付けた 「ひぃ…イくっ…イくぅっ…!!」 一際高い嬌声をあげ白石が達しても千歳は締め付けに一瞬眉を顰めたが動きを緩める事はなくさらに加速させる 「やっ!あぁ!あっ!ひゃあぁぁぁ!!」 達して敏感になった躰で更に抉るような刺激を加えられ白石は与えられる快感に目を見開くと先ほどよりも大きな声を発するとピュシャアと勢いよく透明な液体を結合部から発しながら再び達した 千歳もそれに合わせ勢いよく射精をする それにすこしビクビクッと反応を示しつつも白石はぐったりと動かなくなった 千歳はふぅ、と一息つくとズルリと肉棒を抜く すれば栓をなくしたそこからどちらのともつかない体液がドロリと溢れ出てきた 右目が疼く日は決まって何かのガタが外れる その何かは食欲だったり睡眠欲だったりもするが圧倒的に性欲が多い その理由はわからないが普段は淡泊な分のツケだろうと思っていた しかし独りで慰めるのも面白味もないな、と思った時に目を付けたのが白石だった 美人だしかわいらしいし何より自分に惚れている、そのうえ名器ときたものだ これ以上に最適な者などいるだろうか この話を持ち掛けた時、断られるだろうなと思っていた 気高く完璧な聖書は高嶺の花である しかし意外にも彼女は縦に首を振った 持ち掛けておいてなんだが可愛そうな女だと思った そんなにイイ女でありながら自分なんかに惚れているだなんて 誰も好きになれず女遊びばかりを繰り返している自分なんかを その時白石は一つだけ条件をだした 「うちのこと好きにならんでええ、やけど恋人のふりして」 面倒だと思った しかしいい退屈しのぎだとも思った 千歳は軽い気持ちで首を縦に振った 幸いこちらにまだストックの女はいない事だし女の子をエスコートしたりなんやするのは案外好きだった それ以来、白石とは恋人ごっこをしている それは学校だけではなく今日のようにアパートに押しかけて食事なんかを作りにくる事もあるし映画や買い物に行った事もある 隣に美人がいるのは嫌な気分ではなかった 代わりに白石は自分がセックスを求めた時に断る事はなかったし最中に否定の言葉を上げる事も無理な体位に音を上げる事もしなかった 千歳はスルリと頬の涙の跡をなぞった 始めは都合よく思ったそれに不満を感じるようになったのはいつからだろう イヤ、と言いそうになるたび噛み締める唇をこじ開けて本心のまま鳴かせようと何度思っただろう しかししなかったのは面倒とかそんな理由じゃなくてこの関係を壊したく無かったのだ 白石は愛をささやいてもそれを自分に求める事はしなかった いつからだろう、それに対して口を開きかけるようになったのも 今日、彼女が告白されていた 彼女が頻繁に告白されているのは知っていたがその現場を見たのは初めてだった なぜだかしまった、と感じたとたんに右目が疼きだし紛らわすように裏山で昼寝をしたがそれが止むことはなく、今に至る ここ最近、右目が疼く事が増えた気がする そしてそれに伴いある事に気がついた 右目は、感情が高ぶると疼くのだ もごもご、と口が動いたが目覚めたようではなかった そっと唇に触れてみる 「ち…とせ」 ビクっと大げさな程に肩が揺れたのがわかった 「す……き…」 未だにそんな事が言えるのか、と驚くと同時に言いようのない充実感に襲われた 気づけば右目の痛みは引いていてそっと小さな桃色の唇を撫でた 「ん……?」 ゆるり、と身じろいでからゆっくりと蜂蜜色した瞳が開かれた 「おはよ」 「おは…よう?」 夢から覚めぬようなつたない口調とトロンとした瞳になぜだか再び右目が疼いた けれどそれはとても甘くて (あぁ…そうか) 「ねぇ、白石」 以前リクエストいただいた悪い男な千歳の手のひらで頃がされるビッチ白石を書こうとした筈が… 千歳が悪い男なとこしかあってない |